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第2話

◇ 「奏、帰るぞ」 ホームルームが終わるとすぐに、環が俺の席へと迎えに来た。相変わらず周りには女子がいて、そのせいで顔をしかめる俺に、文句を言うなとでもいうように環が睨みつけてくる。女子にはバレないように、ほんの一瞬だけ。 こうなるくらいなら一人で帰りたいけれど、それは環が許してはくれないし、結局言いなりになるしか道がない。 「奏くんは、環くんとはしゃべるのに、私たちと話をするのは苦手なのかな?」 「いや……その、」 コミュ障っていうのもあるけれど、俺は特に女子が怖いし苦手だ。ワーワーギャーギャーうるさいし、何を考えているのか分からないから。いや、みんなが何を考えているのか分からないのは当たり前なのだけれど……。それなのに環といるせいでこうして時々絡まれてしまう。全身がゾワゾワして気持ち悪くなるけれど、俺の鳥肌は見えないから視覚的にはただのコミュ障のキモ男にしか見えないだろう。俺が持っている嫌悪感は伝わらない。 「ねぇ、奏くん」 ほら、こうして俺が返事をするまでずっと名前を呼び続けてくる。俺と話をしなくても何も困らないのに、いちいち絡んで来ないで欲しい。俺と接点を持ったところで環との関係を手伝うことはできないし、手伝うつもりもない。そんなことは絶対にしてやらないんだから。 「奏くんってば」 「……えっと、」 あああ。俺には必要のない、こんなにどうでもいいことに頭を使いたくない。 どう返せばいいの? 何の話をすればいいの? この人たちは俺に何を期待しているの? 考えても分からない。 助けてほしいと、環をちらりと見てみるけれど、環はさっきよりも怖い表情を俺に向けていた。……え、俺が悪いの? この状況を一人でどうにかすることもできないから情けないって、そういうこと? 今度は怒っている環をどうしたらいいのか分からなくなって余計に焦る。環を怒らせると、叩かれるからすごく嫌だ。嫌いな女子のせいで環に嫌なことをされるなんて、たまったもんじゃあない。 そんなことをぐるぐると考えて結局返事もできずにしばらく黙っていると、隣から大きなため息が聞こえた。……いや、実際には聞こえていないのだと思う。みんなの王子様環くんはそんなことはしない。俺だけに聞こえる、彼のため息。怒っている時の、大魔王環くんの大きな大きなため息。 「こいつは人と話すのが苦手なの。だからさ、あんまりそういうこと聞かないでやって。ね?」 さすが、みんなの王子様環くん。一瞬で女子の目がハートになる。 「ごめんね奏くん。でもたまにはお話しようね」 目をキラキラさせながらそう言って形だけ謝ると、女子たちは俺に向けていた意識を環へと向けた。隙あらば彼に触りたいとそんな感じで、環の腕に手を置いている。自然なタッチを装ったのだろうけれど不自然さしかなく、けれど俺にはそれに皮肉を言うこともやめるように言うこともできないから、やっぱり黙って俯いた。

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