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6杯目。
「んぅ……ん、」
若干のむず痒さを感じ、ゆっくり意識が浮上する。
(眠い…眩しい…くすぐったい……)
強い光と頬をふにふにされる感覚で居心地が悪い。
「んー…、」
暫くもぞもぞ動いていると、もすっと何かに顔が触れた。
良い匂いがする。暖かい。
気持ち良くて段々と意識がまどろんでいく。
「クスクス…もう朝だよ。」
優しい声と共に全身が暖かさと良い匂いに包まれ、再び意識が浮上する。
「起きて…、遅刻しちゃうよ?」
その言葉に促されパチパチと数度瞬きを繰り返した。
ぼやけた視界が次第にはっきりしてくると、今の状況を一気に脳が理解する。
「ぅぁッ///ひ、陽月 さん////」
「おはよ。」
「…おはよぅ…、ございます……//////」
(そうだ、そういえば昨日は陽月さん家に泊まったんだっけ…///)
寝起きからお兄さん、陽月さんの綺麗な顔のドアップは心臓に悪い。
起きたばかりだと言うのに心臓が忙しなく働いている。
「今日1限からだよね?そろそろ朝ごはん食べようか。」
そう言って、心臓とは裏腹に未だ動きの鈍い俺の身体を陽月さんがゆっくりと抱き起こしてくれた。
「ふぁ…ぃ…、起きます…」
「ふふ、眠そう。」
「…ん。眠い…」
まだシパシパする目を擦る俺の手を退け、陽月さんがそこにキスを落とす。
「無理させちゃったね。今着替え持って来るから、ご飯できるまでゆっくり準備しておいで。」
「うぁ…だ、大丈夫です…////////」
その…き、気持ち良かったし……
ゴニョゴニョと聞こえるか聞こえないかの声で呟く。
「!!………」
まだ少し腰は痛むけれど、そうしてくれと望んだのは俺だ。
これは幸せな痛みだ。
嬉しくて、照れ臭くて、でもやっぱり幸せで。
俺がシーツにくるまり にへにへ笑っているとベッドがギシッと音を立てた。
「?…陽月さん?」
「朝夜君…、やっぱり今日は休みなよ」
「へ?…ッ、ぁっ!」
陽月さんの細い指が、シーツを潜り俺の素肌に触れる。
じりじりと脇腹…胸へと手が滑り、同時に昨夜の快感が蘇ってくる。
そのまま掌が丁度心臓の上に来た時、視界は寝室の天井と陽月さんだけになった。
「ひっ…陽月さッ、」
「もう一回しよう…?」
「なっ!?…ンッ、」
ちゅ…
首筋に陽月さんの唇が触れた。
気持ち良さとくすぐったさの混ざった感覚に肌がぞわぞわと粟立つ。
「ね?お願い…?」
「っ、だっだめ、俺学校……ひんッ////////」
「ここ、」
濡れてきた。
陽月さんの指の動きに合わせて クチクチ と粘着質な音が鼓膜を犯す。
「…ッゃ、さ、さわるからぁっ…、ぃゃ、ぁッ////」
「本当に嫌だと思ってる?」
「ッ~~~ぁ/////」
耳元で低く呟かれ背が仰け反り、勝手に腰が浮いてゆらゆら揺れ出す。
ずるい、ずるいっ
いつも澄ましているくせに、こういう時ばかりそんな声を出すのだから。
ずるい、気持ち良い、だめ、やっぱり気持ち良い…。
だんだん頭がボーッとしてきた。
「朝夜君…お願い……」
切なそうな、少し掠れた低い声。
あ…だめ。
「いやッぁ!だめッ、らめッ、わかったっ分かったからぁッ!!手、とめっ、あっ、あ、」
「ほんと?ありがとう。じゃあ一回イっておこうか。」
「やぁッ、うそ、だめっ、イクい"ッ…、はッぁ!!!」───
「はい、水飲める?」
「…はい"……」
「ごめんね、ついやり過ぎちゃって…ご飯食べれそう?」
ペットボトルの水を飲む俺の背を、本当に申し訳なさそうに摩る陽月さん。
「…ん、食べます。」
「了解。…今日は何が飲みたい?偶には紅茶にする?」
俺の口端から溢れた水を陽月さんが手で拭きながら訊いてくる。
「んー…ふふ、『いつもの』下さい。」
「!……ふっ、可愛い…。畏まりました。とびっきり美味しい『いつもの』、お持ちします。」
出来たら呼ぶから、ゆっくりしてて。
陽月さんは最後に額にキスを落として部屋を出ていった。
(カッコイイ…///)
「ンンー、ふぁ…、ぁ…腰が怠い。」
俺はのびと欠伸を一つしてベッドに寝転がった。
頭上の窓から、朝日と爽やかな風が入ってきて心地好い。
雀達の楽しそうな囀ずりと、扉の向こうから聞こえるキッチンの音に幸せを感じる。
(陽月さんの淹れる紅茶も美味しいけれど…、やっぱり、)
「朝はあなたの、珈琲が飲みたいな。」
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