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第2話 クールな研修医
「……っ……」
黒崎は、落としたボールペンを拾おうと、身を屈めた瞬間、激痛が左脇腹から肩にかけて走るのを感じ、思わず息を詰めた。
少しずつ息を吐き出していきながら、痛みが治まってくるのを待つ。
鋭かった痛みが、徐々に鈍い痛みへと変わっていく。
……やっぱり肋骨でも折れてるのかもしれないな。
初めは痛みなどほとんどなかったのに、ここ二・三日になって、鈍痛がし始め、時々鋭い痛みが起きるようになっていた。
一週間前のことだった。
黒崎は当直の帰り、自宅のワンルームマンションへ続く狭い一方通行の道で、車に引っかけられ、地面に叩きつけられた。
激痛に見舞われ、倒れている黒崎のもとへ、運転手が蒼白な顔で駆け寄ってきた。
「大丈夫ですかっ!? 今、救急車を呼びますからっ」
黒崎より少し年上と思われる運転手はスマートホンを取り出したが、その手がガタガタと震えている。
地面に叩きつけられた瞬間こそ、激痛に襲われたが、すでに痛みはかなり楽になっていた。
黒崎は、震える手でスマートホンを操っている男性をとめた。
「……オレなら大丈夫ですから。もう行ってください」
「でも……」
黒崎は立ち上がると、服の汚れをはたいた。痛みはほとんど治まっている。
躊躇する男性に背を向けると、黒崎は自宅マンションへと歩き出したのだった。
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