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第28話 まだ解けぬ謎を抱えて

 屋上でのやり取りから、数日後の夜。  黒崎が一日の仕事を終えて、更衣室で着替えていると、勢いよく扉が開き、沢井が入ってきた。  走って来たのか少し息を切らして、 「良かった、間に合ったー」  黒崎を見るなり、そんなふうに言った。  黒崎の謎はいまだ解けておらず、このときも沢井の姿を見るなり、途端に心拍が駆け足を始めたが、それを決して顔に出さず、懸命に冷静さを装った。 「……なにか、オレに御用ですか?」 「ああ。オレも今日、終わりなんだけどさ。おまえ、これから時間あるか? 黒崎」 「え……? はあ……」  無表情の仮面を被ってはいるが、黒崎の内心は、処理しきれないほどの謎の感情で、いっぱいだった。 「それじゃ、オレが、怪我の全快祝いに奢るから、付き合えよ」 「……え、でも、全快祝いなら、ついこの前していただきましたけど……」  そう三日前に山本が中心となって、看護師や事務の人たちを集めて、病院の近所にある居酒屋で全快祝いをしてくれた。  先輩医師である、沢井も川上も三月も、部長である松田までもが、代わる代わる顔を出してくれた。 「あれは外科医仲間全体で、だっただろ。今夜はオレと二人での全快祝いだよ」

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