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第93話 怒りと苦しさと

 沢井は嗚咽をこらえて、暖かいお湯で満たされたバスタブへ、ゆっくりと黒崎の冷え切った体を沈めた。  自分の服が濡れるのも構わず、何度も優しく冷えた体を撫で擦る。  脚を汚していた血と精液もシャワーできれいに流した。  彼の最奥へ指を入れて、中を丁寧に洗うと、ゴポッと不快な音とともに血と精液があふれ出てきた。  沢井は強く唇を噛みしめた。  黒崎をこんなひどい目に遭わせた男たちに……それが誰であるかも分からないままに……殺意を覚えた。  愛する人を守れなかった自分自身に対しても同じ気持ちだった。  強く噛みしめすぎて唇が切れ、バスタブの中へ血が滴る。  冷えた体を何度も擦り、暖かいシャワーをかけ続けているうちに、真っ白だった顔にようやく色が戻ってくる。  口移しでうがいをさせると、カサカサだった唇にも潤いが戻った。  沢井は傍にあったバスタオルで彼の体を丁寧に拭うと、探し当てたクローゼットから持ってきた服を着せる。  そして、黒崎の体を抱きかかえると、ワンルームの部屋の一番奥に配置されているベッドへ寝かせた。  冷え切っていた体はすっかり暖まったようで、顔色も良くなってきて、唇にも色が戻ってきた。  沢井はベッドの傍に座り、どうしようもない苦しい気持ちを抱えたまま、彼の寝顔を見つめた。

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