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第92話 嗚咽

 部屋の狭さに比べ、バススペースは大きめだった。  沢井はお湯を勢いよく出すと、バスタブに溜めていく。  お湯が溜まるのを待つあいだに、暖房を最大限にきかせた部屋で黒崎の服を脱がしていき……沢井はひどい衝撃を受けた。  彼の身になにが起きたのかはすぐに分かった。  さんざんに凌辱された跡。恐らく複数の男に、それも長時間にわたって。 「くろ、さき……」  沢井の声が震える。 「誰がこんな……」  それ以上は喉に詰まって言葉が出なかった。  沢井は血が滲むほど唇を噛みしめる。  黒崎の脚には血と精液が幾筋も伝っていた。  沢井の目から涙が零れ、嗚咽が漏れる。  彼の腹部は、殴られたのか、蹴られたのか、青く内出血していた。  両手首にも縛られたような痛々しい跡が残っている。 「黒崎……」  どんなに痛かっただろう、どんなに怖かっただろう。 「……黒崎……、黒崎……」  オレはおまえを守ってやることができなかった……!

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