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第95話 目覚めた彼にかける言葉は……?
どれくらいの時間、そうやって黒崎の寝顔を見守っていただろうか。
黒崎が目覚めたのは、もう明け方、早起きの鳥たちがさえずり始めた頃だった。
小さく身じろぎしたかと思うと、瞼がゆっくりと開かれていく。
「黒崎……」
大きな瞳が少しずつあらわになるのを見守りながら、沢井はそっと彼の頬に触れる。
黒目がちの瞳はしばらくぼんやりと虚空を彷徨い、やがて沢井をとらえる。
「……黒崎……」
沢井が再び彼の名前を呼ぶと、
「……沢井、先生?」
か細い声が沢井を呼んだ。
黒崎はまだぼんやりとしている様子だった。
「ここは……」
「おまえの部屋だよ。昨日、おまえが病院へ来なかったから心配で来てみたんだ」
「……そう、ですか……」
黒崎はまだ眠りの欠片に捕われている意識を、現実へ戻そうとでもするかのように、視線を巡らせている。
沢井は彼にどんな言葉をかけてあげればいいのか、迷っていた。
ひどく傷ついているだろう黒崎をこれ以上苦しめるようなことは、絶対にしたくない。
けれども、彼をこんな目に遭わせた輩をそのまま見逃すなんてできない。なんらかの制裁を加えないことには、沢井の殺意ともいえる怒りはおさまらない。
沢井が言葉を躊躇っていると、黒崎のほうが口を開いた。
「……沢井先生が体、洗ってくれて、ベッドまで運んでくれたんですか?」
ほとんど抑揚のない声だった。
「……ああ」
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