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肉豆腐⑩

尚之は煙草を吸いながら 言葉を続ける。 「ソイツ大丈夫か。例の地上げ絡みの件で お前に近づいてきてるんじゃねえのか? 簡単に人 信用するからだよ。 そんなんじゃ いつか本当に騙されるぞ。 早く 売っちまえばいいのに。 対して儲からない惣菜屋なんかより 家と店 売った金で大学行って就職すればいいだろ。 お前 頭はいいんだし今からだって何とでもなる。」 商店街を潰して巨大商業施設を作る計画が 持ち上がり 反対する店に 地上げ屋が 押しかけて来るようになったのが半年前。 嫌がらせは多岐に渡り それでも色々対処して ここ一カ月くらいは 小康状態が続いていた。 ただ 反対している店ばかりじゃない。 特に比較的新しい店の人達の中には 金が貰えるなら その方がいいかもと 及び腰になる人も出始めていて 商店街の寄り合いでいつも揉め事が起きている。 山田さんが会長で なんとか治めてはいるけどな。。 尚之は商店街なんて何とも思っていない。 友達の店が無くなる事になっても 売った金で 他でやればいいだけだって 本気でそう思ってる。 売り上げのいい店ばかりじゃないから その考えも強ち間違いじゃない。 地元で 昔から慣れ親しんだ街を失いたくない。 じいちゃんばあちゃんの店を潰したくない。 そんな想いも ただのセンチメンタルで 片付けられる。 もうこの話を尚之とするのは随分前に止めた。 わかって貰える訳が無いから。 わかりあえた事はない。 じゃあなんでコイツとこうしているんだろ。。。 最近 ずっと自問自答を繰り返していた。

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