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デリバリー・クリスマス
※クリスマス2019/クリスマスSS
バイト三昧の苦学生×大学生
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今日のために予約していたケーキをテーブルの上に置き、蝋燭 に火を着ける。なんとなく付き合った年数の4本の蝋燭を立てた自分に苦笑した。
「ハッピーバースデー……、じゃないや」
条件反射的に思わずそんな歌を歌ってしまう。そう言えば大地の誕生日もこうやって俺一人で祝ったことを不意に思い出した。
「ダイ、メリークリスマス」
目の前にいるのは恋人の大地じゃなく、こっそり飼っている猫のダイだ。勿論、名前は大地の名前から取ったんだけど、実は女の子だったりする。
拾ったのは上京して一人暮らしを始めて直ぐで、最初は町子さんって名前だった。大好きなうちのおばあちゃんの名前から取ったんだけど、大地と付き合い始めて直ぐに改名したのだ。
「大地のばか……」
大地は実家から仕送りを貰っていない苦学生で、バイト三昧の毎日を送っている。週6で働いている大地とは忙しすぎてなかなか会えないんだけど、よりによってクリスマスまでバイトだなんて。
ピザ屋の宅配と夜間の居酒屋のアルバイトを掛け持ちしている大地とは、土日祝日は絶対に会えない。クリスマスも例外じゃなく、特にピザ屋はかき入れ時で多忙を極めてるらしかった。
「会いたい、な」
別にクリスマスだから絶対に会わないといけないわけでもないけど、やっぱり会いたかった。大地のために買ったプレゼントも今日中に渡したいけど、どうやら渡せそうにない。
クリスマスイブの昨日もバイトで会えなかったし、クリスマス本番となると尚更なんだけど。頭では分かってはいても寂しさを隠しきれなくて、ダイをぎゅっと抱き締めた。
その時、
『お待たせしましたー。ピザハントです!』
インターホンが鳴ったと同時に、そんな元気な声がした。ってか俺、ピザなんか頼んでないぞ?
不審に重いながらもドアを開けたら、
「メリークリスマス!」
サンタのコスプレをした配達員がLサイズのピザを片手に立っていて。
「大地!?」
「お代は貰ってるんで。ありがとうございました!」
イケメンな配達員サンタはそう言って、慌ただしく配達に戻って行った。
「え、あっ。大地!」
思わず後を追いそうになったけど、寸でのところで思い止 まる。それだけでも嬉しいのに、ピザを開けたらメモと一緒に赤いリボンがついた小さなプレゼントが添えられていて。
思わず泣いてしまったメリークリスマス。
END.
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ツイッターに投稿したクリスマスSSです。
結局、今年も書き下ろしの短編小説を書けなかった;
2019/12/25
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