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第1話
突然だが僕、高嶋唯人(たかしまゆいと)はそんじょそこらじゃちょっと見かけられない程度にはイケている。
イケているというのは、見た目、勿論中身もだが、まあ言ってしまえば全てが!!だ。
その証拠に僕はこの超有名おぼっちゃま全寮制学園でトップの人気を誇る生徒会長、ああ憧れの生徒会長……藤沢啓(ふじさわけい)様の親衛隊隊長を務めている!
親衛隊というのは、親衛対象の身の回りのお世話から、ゴミ(藤沢様に悪影響を及ぼす不届きもの共)の掃除、はたまた生徒会のお仕事のお手伝いまで何でもこなす、言わば藤沢様の従者と言っても過言ではない存在だ。
まあ僕程の存在であれば?生徒会入りもあり得たのだが、僕はこの学園に入学したあの日……藤沢様を見たあの瞬間から、今の自分なんかが彼と同じ土俵に入っては行けないと確信しまったのだ。
加えて、その年の生徒会は確かにすごかった…。副会長も会計も書記も、僕に相応しいと言ってやっても過言ではないくらいのレベル(顔)だった。しかしやはりずば抜けていた藤沢様……僕は彼の親衛隊になることで、誰よりも藤沢様を強く思える立場を手に入れたのだ!
「ああ、なんて罪な僕……」
「おいたいちょー、いいから仕事」
「うるさいよ新垣(あらがき)。君は黙って僕の分もやっていればいいんだ」
「アホですか?アホなんですかアンタは〜?俺の十分の一もやってないくせして何悠長に一人語りしてんじゃボケカスオラ!!!テメエで引き受けたお仕事だろコンニャロウ!」
「新垣、口がお下品だぞ。僕を見習っていつもピシッと背筋を伸ばし、言葉遣いは丁寧に、余計なことは喋らない」
「そういうアンタは余計なことしか喋ってねえよ!」
と、まあうるさい新垣副隊長は置いておいて、僕は生徒会長様から頂いた資料にホッチキスをガチャンと閉じた。
ああ…、親愛なる生徒会長様のお仕事を手伝わせて頂けるなんて……なんて幸せなことだろう。
「あーあぁ、ったく、全校集会のたんびに大量印刷のホッチキス係か…やんなりますねえ隊長」
手が見えない程高速でホッチキスを打ちながらグチグチ言ってくる新垣に、僕は隊長らしく会長様の為ならたとえ火の中水の中草の中、森の中……と言ってやる。
「……この人はほんと、見た目に全部栄養もってかれちまったんだな……」
そんなことを新垣が呟いたのも聞こえず、僕は生徒会長様に思いを馳せながら丁寧にホッチキスを打ち続けたのであった。
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