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第2話

*** それから数日後のことだった。 「なにぃ!?あの、泣き虫の涙はぞうきんで拭えがモットーの人間嫌いで冷徹で有名な副会長様が笑っただって!?」 「そうなんです!」 「しかもあのチャラすぎて三学年に各五十人ずつもセフレがいてそん中の五人くらいを想像妊娠させたって有名な会計様が、セフレ関係を一切切っただって!?」 「そうなんです!!」 「そしてあの一年に一回喋るかどうか、会話するのが嫌すぎて真正面にいてもスマホで言いたいことを伝えてくるくらいコミュ障の書記様が、めっちゃくちゃおしゃべりになっただって!!?」 「そ、う、な、ん、で、す!!!」 「ぎゃーーーーー!!」 その日、僕達親衛隊員が集まる学園のある一室は悲鳴に包まれていた。 なんでも、謎の転校生が現れたらしい。 転校生は僕と同じ二年生。五月という中途半端な時期に転校してきて、上記のように生徒会役員達を片っ端から虜にしているそうだ。正直今日まで全く気付かなかった。 このままではいずれ、愛しい生徒会長様にまでその毒牙が……!! 他の生徒会役員の親衛隊員を務める仲間達がおいおいと泣き叫び、悲しみに暮れる中僕は自分の身にいつ降り掛かるか分からないその恐怖に震えた。 「制裁を!!」 「制裁だ!!!!」 「そうだ、制裁を!!!!」 躍起になって叫びだす会長様親衛隊以外の隊員達に、僕は目を逸らす。 「……つーか隊長、あんた同じクラスだよ」 「なんだって!?新垣!!何故ソレをもっと早く言わない!!!」 「アンタが鏡に夢中すぎて気付かんかっただけじゃろい!!」 スパーンと頭を叩かれ、痛いと言いながら新垣を睨むと若干頬を赤くする新垣。 「どうした風邪か?」 「あほ!」 「風邪にはネギがいいらしいぞ!首に巻いて寝るんだな!」 「ちげえよ!!」 いやはや、困った。 会長様親衛隊隊長として、僕も動くべきなのだろうか……しかしまだ、会長には手を出していないという転校生。 「転校生をつぶすぞー!」 「「「「えいえい、おー!!!」」」」 盛り上がっている他隊員達を後目に、僕はため息を吐いた。やれやれ、イライラしてると肌が荒れるぞみんな…。

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