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第3話

みんな怒ってるな〜こわっ。 しかしこれは僕自身の身にもいつ降り掛かるとも分からない恐ろしい事体だ。 うん、そうだな、まずは転校生を捜すことからスタートしよう! 思い立った僕は早速探偵服に身を包むと、虫眼鏡を持って捜索を開始した。 まずは新垣から得た情報、僕と同じクラスに転校してきた、とういうことで自分のクラスにでも行ってみようではないか。 壁をつたい、誰にも気付かれないようにこそこそと移動する。 「何してるんですか?」 「シィッ!生徒会長様を守る為の捜査です」 僕は誰とも分からない人に静かにと人差し指を自分の口元にやりながら注意した。 それにしても後ろにいるこの生徒、よくこんなに上手に隠れている僕のことを見つけたなあ、褒めてやろうか。そう思い後ろを振り向こうとしたが、何故か頭を固定され振り向けなくなってしまった。 「な、なにを!?頭が動かせない!」 「それは、生徒会長本人から言われたんですか?」 それにしてもこの生徒の声、愛しの会長様に似ている……。低すぎないテノールの声。優しく僕を包み込む、癒しのボイス…。 「僕は会長様の親衛隊隊長だ!言われる前に動くのが僕だ!ああ……なんて健気、早く悪の黒幕転校生を成敗してやらなければ!」 「転校生……ああ、転校生」 「知っているのか!?」 「知っているよ。いろいろあってね」 「そうか!もし君が知っているのなら是非情報が欲しい、今どこにいるか知っているだろうか?」 「生徒会室に」 「ええ!!??な、なんて言うことだ……ああ、会長様がぁぁ」 誰かは分からないが、そいつの情報によると噂の転校生はなんと生徒会室にいるというではないか! 「ぼ、僕でさえ一週間に一度会えるかどうかだというのに…!!」 「ちなみに生徒会長は今生徒会室にはいない」 「!!!そ、それはなんと……奇跡!!神よ!!僕の日頃の行いが良かったのかな?やっぱ昨日ホッチキスいっぱい頑張ったし、一個指に刺しちゃっていたかったし、そのご褒美かな」 にこにこしながらそんなことを呟くと、後ろから一瞬黒いオーラを感じた。 頭は相変わらず固定されたままだ。いい加減肩が凝りそうだ。僕は離して欲しいと言おうとしたが、それより前に怪我をした右手を取られて、絆創膏のしてあった人差し指を掴まれる。びりっと絆創膏を剥がされると、彼は僕の指を口に含んだ。ぬるっとした感触だ。 「ちょ!!!君!何してるんだ!この指は生徒会長様の為だけに存在するんだぞ!」 「ああ……ならいいだろう」 「はあ!?ちょ、っくすぐっ…ん」 「いくら会長の為でも、怪我は良くない」 そう言って彼は僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でると、忽然と姿を消した。 結局顔は見れずじまいだ。おいおい、人の指を舐めておいて大層な態度だな。 いや、なんでか不思議と悪い気はしなかったのだけど…? しかし良かった。生徒会室にいるという転校生。だがそこに会長はいない。 僕はもしかしたらこの格好は無意味かもしれないし正直窮屈だな〜思い変装を解いて再び教室へ向かった。

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