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第6話

「つまり、転校生の牧野聡は会長の弟で、会長の命令でここへ転校したがいろいろあって高嶋隊長に恋をし、すると会長に再び転校を命令されたわけだ」 「そう!」 「会長、横暴だ!俺のさっとんをまた転校させよーなんて、いくらさっとんのお兄ちゃんだからって許せないー!」 会計の声に副会長と書記が頷く。 さっとんて……もしかして牧野のことか? 「皆さん、うるさいですよ。聡は私の弟です。何をしようが私の勝手でしょう」 キラキラと王子様オーラを放ちながら、会長様が言い放つ。 ああ、眩しい。やっぱり……好き。 「唯人、唯人も私のことが好きでしょう?」 「あ、あ、え、あ、はい!!好きです!!!」 「ふふ、ほら」 「ちょーっと待て!高嶋、考え直せ!!兄貴は鬼畜変態二重人格クソ野郎だぞ!」 そう言ってさっき会長によって引きはがされた牧野が再び俺に抱きつこうとしてきた。 ああ、この顔も好きだ……。俺はとろんとした表情を牧野に向けた。 「っ!隊長!!」 新垣に遮られ、牧野は新垣を睨みつける。 「……いい加減にしろ愚弟」 ゴゴゴゴゴ……とすごい威圧感を感じてみんなが一斉にそちらを見れば、会長が真っ黒オーラを放って腕を組んでいた。 こわい! 「唯人は俺のものだ」 「会長!?」 豹変した会長に副会長がハテナを飛ばしながら叫ぶ。 「唯人はな、自分にはいつか王子様が迎えにきて、二人で幸せに暮らすと思っているんだ」 「なんですかそれ、隊長……」 「何故ソレを!!」 「可愛い夢だろ?唯人と俺は同じ幼稚園だった、まだあどけなくてナルシストでもなんでもなかったあの頃の唯人はまさに天使だったな……まあ今もバカすぎて可愛いが……。そんな唯人の七夕のお願いがそれだ。完璧な王子様になりたい、そして、もっと完璧な王子様に迎えにきてもらいたい。二人で幸せになりたい。俺はこっそりその短冊を取り外して自分のものにした。そして唯人に手紙を書いた。この学園に通い、唯人が高校二年になった年の生徒会長が唯人の運命の王子様だと」 「きも!!完全にきもい!!!完全にヤバい奴だ!!!」 新垣が何か言ったけど、新垣と牧野以外みんな目を潤ませていた……勿論僕もだ……。 なんてことだ……僕はずっとあのときの謎の手紙の言葉を信じて、今日までやってきた。 でもまさかその手紙の差出人の正体が会長様で……そして会長様が僕の王子様…… 正直あんまりよく理解できてないが、会長様の僕を思う気持ちに胸がいっぱいになった。 「藤沢様……」 「唯人!!」 「ってバカ!!おい!目を覚ませ高嶋!!」 慌てて牧野が僕と藤沢様を引きはがそうとするが、正直もう会長様しか僕の目には映らない。 「好きだ唯人、迎えにきた」 「藤沢様……!」 「啓って呼べよ……」 「啓、様ーーー!!」 「くそー!なんだこの茶番!」 「聡……こいつらはこいつらで、放っておいてやろう。神もそれを望んでいるさ」 「何言ってんだよ裕也(書記)!何目潤ませてんだよ!アホかお前!」 「さっとん、水入らずにしてあげよ?」 「お前もなんだよ!何感動してんの!?おかしいと思わない!?」 「会長も高嶋くんも純粋で……あぁ、この僕の目に涙が、」 「ぞうきんで拭ってやろうか!?」 役員達につっこみをいれまくる牧野。嗚咽を漏らしながら泣き始める他隊員達。部屋中に感動が立ちこめる。 「アホか……隊長、俺は諦めねえぞ……」 新垣のつぶやきも空しく、みんなの嗚咽に消えていく。 「啓様、ずっと幸せに暮らしましょう!」 「俺だけの、お姫様にしてやるよ」 「王子様でお願いします!」 「どっちでもいい、さあ、こいつらは放っておいて二人になろう」 にやりといやらしく笑った偽物王子様に見事に捕らえられた僕は、お姫様抱っこで王子様の部屋へと連れ去られたのであった。 end ―――――――――――― 高嶋唯人 生徒会長親衛隊隊長 美人、ナルシスト、おバカ、 藤沢啓 生徒会長 美形、王子様、腹黒、二重人格 転校生の実の兄 牧野聡 転校生 ぐるぐる眼鏡もじゃもじゃ頭、眼鏡を取ると会長そっくりの美形 わりと常識人 新垣将大 生徒会長親衛隊副隊長 イケメン、雑、高嶋が好き、一番まとも 他生徒会メンバー 転校生信者

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