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第5話

「新垣!」 「なんすか」 「……変な夢を見た。あれ?ていうか僕昨日、帰った覚えがない。なのに目が覚めたら自分の部屋のベッドに寝ていた。しっかりとパジャマも着ていた」 「……ああ、俺は知ってますけどね(あのクソ会長ついに本性出しやがった、このおばかが気付くのも時間の問題だ…その前にアイツが変態鬼畜野郎だってこと気付かせてやらないと)」 「なんだその、何か言いたそうな顔」 「別に……ああでも、一個だけ。俺実は生徒会長の為にここにいるわけじゃねーんで」 「はあ!?」 「俺一回も会長を崇拝しているなんて言ってねえから。唯人のやりたいこと、手伝ってやるって言っただけだ」 「……確かに」 「だから別に、クビでも良い」 「そ、ソレは困る!新垣程ホッチキスが得意な奴はきっとこの学園中探してもいない!」 「それだけかよ」 親衛隊員が集まるその部屋で、僕はうんうんと唸りながら新垣に夢遊病の相談をしていた。 他の隊員達は、昨日転校生がいきなりイケメンに変身したことによってキャッキャと騒いでいる。転校生に親衛隊を発足するべきでは?と話し合いが行われているようだが……僕は自分の夢遊病が怖すぎてそちらに怯えるので精一杯だった。 ああ……でもそうか、あれは夢ではなかったのか? よく分からないな。どこからどこまでが夢なんだ。 転校生が会長様そっくりの姿だったこと……。 まるで少し幼い会長様のよう……。 ついに誰が親衛隊長になるかという話し合いが始まる。 「それにしても、会長様そっくり、ああ、素敵」 「ちょっと、副会長親衛隊隊長のくせに!」 「自分だって書記様でしょ!?」 「まあまあ二人とも、僕は会計様が一番素敵だと思うよ……まあ転校生も魅力的だけど」 「どこかの隊員が鞍替えするかな?」 「行き来は自由で良いでしょう、数が減ればそれだけ有利だし」 「それにしても会長親衛隊隊長の高嶋くんは、何の意見もないの?」 会計の隊長にそう指摘され、思わず目を逸らす。 「何で目を逸らすの?何かやましいことでも?」 「……僕は、僕は!!会長様の親衛隊隊長!なのに正直、昨日の彼には驚きすぎて、何の抵抗もできなかった……」 「「「抵抗?」」」 「そしてそんなことより、自分の夢遊病が怖い!!何か病の前兆だろうか?このままじゃ満足に隊長なんてやっていられない!!」 「……なにそれ」 副会長親衛隊隊長の返事に、俺は俯く。 「会長様が豹変した夢を見た、それに僕、意識がないうちにベッドに寝ていた……おかしいんだ昨日から」 「……夢じゃないと思うけど」 「新垣!お前に何が分かる!」 「いや、……(昨日生徒会長にいろいろグチグチ言われて唯人の部屋まで呼び出されたし)」 そのとき、コンコンというノックがして新垣がはいはーいと言いながら扉を開けた。 「高嶋!!!」 そこに現れたのは、件の転校生。 しかも何故か僕の名前を呼んでいる。 彼は走って近寄ってきたと思ったら、椅子に座っている僕に股がるようにダイブして、抱きしめた。 「兄貴が、俺をまた転校させようとするんだ!高嶋……いや、唯人からも何か言ってやってくれよ!」 そう叫んだと思えば、再び扉がバンッと開かれなななななんと、藤沢様が現れる。 ついでに生徒会役員達も次々に現れ、みんながみんな「サトル……」と転校生の名前を口々に叫ぶ。それを見た隊員達がキャーキャーと騒ぎ始め、終いには服や髪を整えておめかししだす。 なんともカオスなこの状況に、新垣が一発ガンっと机を叩いてみんなが口を閉ざした。 「少し静かに、状況の説明を。会長」 新垣の額に怒りマークが見えた気がした。

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