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第1話

頭の中で何度もリピートされる、愛しい声。 甘く、低く、その響きはいつも俺を魅了した。 「愛してる」 「好きだ」 「お前が一番だよ」 嘘か本当かも分からないその言葉が、俺を縛りつけて離さない。 信じていた。いや、今でも信じている。 馬鹿だ、アホだと笑われたって構わない。 俺は先輩を──春樹さんを、誰よりも一番に愛している。 俺の恋人は、一つ上の先輩だ。 知り合ったきっかけはたしか、自販機の前で何を買えばいいか尋ねられたことだった。 「ねえ、後ろの子。ココアとコーンスープ、どっちがいいと思う?」 寒い冬の日だった。 振り向いた先輩は、見慣れた顔。 校内でも有名で、彼女が日替わりするイケメン。 もちろん、俺が一方的に知っていただけで、そのときの先輩は俺のことなんて少しも知らなかっただろう。 それから何度か会ううちに話しかけられるようになり、 気づけば俺は先輩を好きになっていた。 告白して、そして付き合うことになった。 最初は、本当に幸せだった。 あれほど彼女が絶えなかった先輩は、女遊びをぴたりとやめ、俺と一緒に帰るようになり、俺だけに愛の言葉を囁くようになった。

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