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第5章の10←立ち位置に悩むマリアの君

 ツアーも三度目になれば地方でも、ファンのノリは良くなるなど嬉しいことばかりだが、その合間をぬってのギルティーズの準備は、マリア達を大いに悩ませた。 MOONの演奏は四曲とはいえ、会場はあの憧れの武道館… 音も、客席のノリも、これまでのビデオなどで研究はしているものの見当がつかなかった。 さらにマリアには「ROSE」のギターもあった。 そんな時に有り難かったのが、ギルティーズならではの先輩バンドとの絆の強さだった。 ゲネプロの時に、初めての大きさの空間の作業の五人に何かとアドバイスをしてくれたのはニッキー達サディスティック・エモーションの連中だった。 レイジー・スレイジーのギターのHIROは、去年の麗華とのセッションの経験をいろいろと話してくれた。  しかし…移籍組と言われるアナスタシアとディケイドとは、さすがのマリアも話ができなかった。 他の先輩が気を使っているのを見てもわかる通り、生え抜きではない彼らは、いくつかのトラブルと思うように伸びないセールスとがあいまって、スタッフ、事務所までが帝国の中で浮いた存在になっているらしい。 それでZENNとも麗華とも軋轢が生じていたところへ、MOONの華々しい登場がおもしろいわけはなかった。 さらにマリアのセッションでのギターは、ディケイドのメンバーを飛び越えてしまった。 決して合わない人達ではなさそうなのに、彼らとそのスタッフの、MOONを見る目はどうも意地が悪く思えた。

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