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第5章の11←皇帝ZENNと初セッションのマリアの君
五千席ほどのホールのアリーナ部分の客席で「見学」している時に、そういったことに敏感なタカネの目くばせに、最近の気まずさも忘れてマリアは応えていた。
どこへ行っても、嫌な対バンはいるものだと…それを見たCUEは笑いをこらえるのに苦労している。
そこにやってきたシヴァもすぐにわかったらしく、ふふっ、とかすかに笑う。
最後にやってきたMIKUはフォローする義務にかられたらしく、やけに大きな声で、
「しかし…何だね、今からこんなに緊張して、本番はどうなっちゃうのかね? 」
彼の響く声ではあまりにしらじらしく聞こえ、他のメンバーはとうとう爆笑してしまった。
マリアは久し振りにバンドの中に自分の居場所を見つけていた。
ようやくROSEのリハーサルが終わり、麗華と合わせてみても、マリアはあまりうるさいことは言われなかった。
日頃多弁な麗華があまり何も言わないので、マリアは広いステージでギターを抱えたまま、呆然と立ち尽くしてしまった。
が、麗華はアナスタシアのボーカルにも同じように接しているので、少しは気を取り直した。
セッションバンドはリハーサルというものをやっていないので、この時が初めての音合わせだった。
マリアは初めてZENNのドラムでギターを弾いた。
無我夢中のうちにソロになるので、ステージの前の方に出る。
そしてそれが終われば、また麗華のところまで引っ込む。
それを数回こなすうちに、リハーサルは終わってしまった。
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