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epilogue:green
「かなしい夢 だったよ」
「悲しいことだ。悲しくて、愛しいことだ」
少年の肩をさすり、ハプロックは静かに目を閉じた。
「かれらは、しあわせだった?」
「それを知るのは魂だけ」
一度ハプロックを見上げ、そして少年は悲しそうに俯いて呟いた。
「しんでしまったら、はなればなれになるよ」
「よくお聞き、リトルウィチャピ」
ハプロックが、歌うように言葉を紡ぐ。
「肉体が魂を持っているのではない。魂が肉体を持っている。ただ世界が変わるだけ。肉体が滅びた魂は、また別の世界で出会うこともあるだろう」
ティピーの中に、一陣の風が吹き込んだ。
高台の下の平原は、地平線の向こうまで緑で覆い尽くされている。
その中に点在する戦車にも、戦闘機にも、崩れた廃墟にも。苔が生え、蔦が絡まり、緑の一部となっている。
鳥が鳴き、蝶が舞い、バッファローが群れを成して草原を走る。
涼やかな風が吹き抜け、新緑の大地を撫でていった。
「過去の魂たちに、安らかなる未来あれ」
二匹の蝶が葉にとまり、二頭のバッファローが大地を駆け、二羽の鳶が、彼方へ飛び去った。
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