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第3話 兄さん大好き side和磨
「百合子、百合子、」
やだ。いやだ。誰か、誰か、
「秀磨!」
悪夢とともに、目が覚めた。
「はあ、はあ、はあ、」
自然と息が荒くなる。この夢を見たときはいつもこうだ。
「はあ、はあ、ふっ。ふぅ、ふぅ、」
過呼吸になる手前で息を整える。
「今日も夢見は最悪、か。」
昨日はあの男が来ていたから、秀磨が部屋に来ることが出来なかった。悪夢を見たのはきっとそのせい。秀磨が一緒に寝てくれた時にはあの悪夢を見ることはないから。
「秀磨・・・」
シーツの裾をきゅっと握りしめ、弟の名前を呼ぶ。俺の、愛する人の名前を。
「はあ。」
ふと自分の身体に視線を落とし、ため息をつく。
「気持ち悪。」
身体には、実の父親・・・あの男に付けられたキスマークや歯形の痕が残っていた。激しく犯された、心の伴わない情事の跡。無理矢理勃たされて、ローションもなしにぶち込まれたいっそ忘れたい記憶。
「・・・早く来てよ、秀磨。」
顔を布団に埋めて呟く。ああ、泣きたい。こんなことになっている自分が情けなくて仕方がない。
「たすけて。」
心の中に溢れたものが、口から零れる。
コンコン。
「兄さん、入るよ。」
秀磨が、来た。
ボフッ。部屋へ入ってきた秀磨の胸にとびつく。え?何で胸かって?だって、秀磨のほうが身長高いんだ。
「秀磨!」
秀磨の匂いに幸せを噛み締めながら名前を呼ぶ。
「兄さん、おはよう。」
秀磨に視線を送ると、笑顔で返してくれる。
「ん、おはよう。」
秀磨に挨拶を返しながら、昨日会えなかった時の分までぎゅうぎゅうと抱き着く。
「今日も好きだよ。」
秀磨が俺の背中に手を回し、ぎゅっと抱き着き返してくる。
「俺も好き。」
じっと俺の目を見つめる秀磨の唇から囁かれる愛に応える。
「じゃあ、消毒しよっか。」
「うん!」
ちゅ。お互いに見つめあって、それから俺たちはキスをした。
「兄さん・・好き。」
熱っぽい目で俺の名前を呼ぶその声は、低く、優しく、そして甘い。
「ん。俺も、秀磨のこと、だいすき。」
ちゅ。ちゅ。ちゅく。何度か触れ合うだけのキスをして、唇を開いていく。わずかな隙間から秀磨の舌が侵入してくる。口内が蹂躪されて、だんだんと身体が敏感になっていく。
「ん。んん。んぁ。」
唇が離れるたびに、甘い声が漏れる。
「ん。すきぃっ。秀磨ぁ。」
愛しい、愛しい秀磨。好き。好き。大好き。
「?」
下腹部のほうに違和感を持ち、視線をそこにおとす。
「・・・!」
そこには、ほんのりと勃ちあがった秀磨のモノがあった。
「・・・秀磨のココ、勃ってきてる。」
苦しそうに主張している秀磨のズボンを触る。
「んっ・・・兄さんのだって。」
少し反応してから、秀磨も俺のモノを触る。衣服を身に着けている秀磨とは違い、俺はシーツを一枚被っているだけなので、ズボンも、下着すらない状態だ。触る感覚がもろに伝わってきて、ただでさえ敏感な身体がさらに熱を帯びる。
「ひぁっ。んぁ。しゅ、ま、あま、ながく、さわ、ないでっ、あっ。」
それなりにまともな働きをしていた思考制御機能は吹き飛び、しだいに何も考えられなくなっていく。
「大丈夫。今、楽にしてあげるから。」
快楽に堕ちていく意識のさなか、耳に届いた秀磨の声に俺は身をゆだねた。
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