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「あはっ、おめめまん丸にしちゃって、かーわいっ」  はへえ、と情けない、間抜けた息がオレの口から洩れる。  オレをベッドに押し倒し、がっちりとオレの両腕を抑え込んでいるのは、幼馴染であり、『カノジョ』の凪早(なぎさ)。  カラコンが入っていないのに黒目がちでぱっちりとした瞳は、いじわるそうに細められている。自前の綺麗な髪は、オレの顔の真横にまで垂れ下がっていて。  女物の服を身にまとい、華奢な体の凪早は、どこからどうみても可愛らしい女の子――に見えるのだが、実のところ違う。  凪早がオレに馬乗りになったかと思うと、腹に硬いものを擦り付けてきた。ごりっとした感触は、まぎれもなく男の象徴であるソレによるものだった。 「え、え、なん……えっ?」 「今日、ウチ親いないって言ったでしょ?」  混乱し、状況が飲み込めていないオレに、凪早はにんまりと笑う。  確かに、その話は聞いていた。性欲旺盛な高校生同士で、恋人同士になってから随分と経つ。そんなことは考えていなかった、なんて言えない。正直、メチャクチャ期待した。  凪早は母親似で、高校生になっても随分と女らしい見た目をしている。が、いくら女らしい見た目、といっても男なことには間違いなく、だからこそ、男同士のセックスについて調べも済ませてきた。  ――が。押し倒されるのは想定外だった。 「ぎゃ、逆じゃない?」  オレがそういうと、凪早は小首をかしげ、後ろ手での中に手を突っ込んできた。 「だぁいじょうぶ、冬次(とうじ)もちゃんとオンナノコでしょ♡」  すす、と凪早の細長い指が、オレの股間を撫で上げる。 「や、でも、凪早ほど可愛くないし、女になりたいわけじゃないし!」  姉や凪早が化粧をしているのをきっかけに、オレは女装をたびたびするようになっていた。今日も、凪早が新作コスメを大量に買ってきた、というのでオレも試しに使わせてもらっている。  もとより、絵を描くのが好きで、画材がペンと紙からコスメと肌に変わったような、そんな感覚でしかない。  ボディペイントなんかもするし、そのうち特殊メイクもしたいと思っていて。そんなオレにとっては女装というのは芸術の一種で、異性になりたいがための行動ではない。  だからこそ、正直あまり似合うとは、自分でも思っていなかった。ガタイがいいほうではないが、平均男子くらいはあるし。女装に興味のない男よりは女に近いかもしれないが、凪早に比べたら全然で。可愛い系でも綺麗系でもない。 「メイク、落として着替えてくるから、その……オレ、上がいい……」 「えー、なんで?」  つつ、と凪早にやわく頬を撫でられる。くすぐったさと同時に、なにか別のものがぞくりとこみあげてきた。 「これだけ赤いの、チークじゃないでしょ。緊張してる? だぁいじょうぶ、僕がヨくしてあげる」  唇に柔らかい感触。一度ではない。ちゅ、ちゅ、と何度も優しいキスが降ってくる。 「ふふ、さっき塗ったばかりだから、ちょっとついちゃった。じゃ、もういいかな」  少し唇が離れたかと思うと、ささやくように、吐息交じりの声が聞こえる。  何を、と思うより早く、凪早がオレのあごに両手をそえて、再度キスをする。  でも、さっきとは全然違って。押し付けるだけじゃない、食むような、吸い付くような、キス。だんだんと息が苦しくなって、薄く唇を開くと、凪早の舌が滑り込んできた。 「はっ……ン、なぎ……ふっ、なぎ、さ」  化粧品独特の匂いと、凪早の匂いが混ざり合って、変な気分になってくる。凪早の舌がオレの舌に絡むたび、意識がだんだんと朦朧としてくる。  じゅ、と舌を吸われ、自分のものとは思えないほど高い声が部屋に響いた。 「はぁっ……とうじ、すっごく可愛い……。ねえ、下、嫌?」  声も、顔も、体も、すべて女らしいのに、うっとりとオレを見つめてくる瞳の奥の熱だけは、全然、女じゃなくて。  オレは思わず、ごくりと喉を鳴らした。 「本当に嫌だと思ってる?」  ついさっきまでは、絶対オレが上だと思って疑わなかったのに。  今の凪早にそう問われると、ゆるく首を横に振ることしかできなかった。 □■□ □■□  凪早の手によって、オレの服は脱がされていく。ぽーっとその姿を眺めていると、凪早はちょっとむっとしたような表情を見せた。 「ちょっと冬次ー! なんで僕があげた下着付けてないわけっ?」 「あれ女ものだろ……必要ないじゃん」  服は男物で首から上だけは女、というちぐはぐさが嫌で、女装するときは女物を着るが、下着は例外だ。外から見えないので関係ないし、そこまで着てしまったらなんだか超えたら戻れなくなる一線を越えてしまうように思えてならない。 「えー、僕とおそろなのにぃ」  凪早はちら、と自らのスカートをめくって、パンツを見せる。確かに見覚えのあるデザイン。凪早は白基調、貰ったものは深緑基調、と色の違いこそあれど、同じデザインのものだった。 「ていうかお前、女物の下着使ってるの……?」 「女の下着って最高に可愛くない? ね、似合うでしょ」 「……まあ、そりゃ」  似合うか似合うか似合わないかで言えば、すごく似合うと思う。しっかりと主張している部分とのちぐはぐさもまた、凪早の魅力の一つに思えてしまうほど。 「うーん、しょうがないなあ。じゃあ、僕が使わせてあげよう!」 「……は?」 「冬次のココ、たーっくさん可愛がって、女の子みたいにしてあげるっ。そうしたら、ピンクでぷっくりした乳首隠すために、ブラ使わなきゃだもんね?」 「な、に――? え、なんっ」  ぺろり、と乳首を舐められる。右は凪早の口の中。左は凪早の指の先。  一度もいじったことのないそこは、到底快楽を拾うまでには至らないが、凪早がオレの乳首をいじる、という光景を見るだけで、ぞくりと熱が膨らむ。  これから、凪早に抱かれてしまうのだ、ということを見せつけられているようで、くらくらした。 「……きもちく、ない?」 「わかんない、けど、凪早がしてるの見るのは、だいぶ、クるものがある……」 「なあに、それ」  くすくすと凪早が笑う。 「まあ、最初はこんなもんか。だぁいじょうぶ、これからずーっと一緒だし。僕が冬次を可愛いオンナノコにしてあげる。でも、もうちょっといじらせて」 「なに……」 「いじるの、結構楽しいよ。冬次が顔真っ赤にして僕を見るの、たまらない。冬次も触る?」 「オレ、はいい……」 「ふふ、やっぱり冬次は下で間違いないね。ちょっといじっただけで、すっかりオンナノコの顔してる」  凪早がオレの乳首をいじる手を、するりと下半身へ伸ばす。  下着越しに、トントン、と後孔をつつかれたのが分かった。 「ここも、ちゃぁんとオンナノコにしてあげるからね」

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