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第3話

事が収まると滝谷君はホットミルクを片手にベッドに座った。 「ありがとう……うん。美味しい……」 痛む腰に毛布を被せながらそれを受け取り、一口飲む。甘くてコクのある足がが優しく広がる。 「そんなに気にしなくてもいいんだよ?ほら、僕も促しちゃったし……」 「い、いえ……。続けて二回もヤッてしまってごめんなさい……」 反省して項垂れる様子はぺたりと耳を下げたワンコみたいで可愛かったし、それでチャラに思った、なんて言ったら優しすぎると怒られるかな? 「あの」 「あの」 しばらく沈黙が続いていた空間に二人の声が重なり、顔を見合わせる。それからクスリと笑い合った。 「じゃあ、どうぞ?」 場を譲ると彼は太ももに置いた手を見ていた。 「なんで、創真さんはオレのことあんまり呼ばないんですか?」 「そ、それは……」 「教えてください。たしかに読み方一緒だけど……あっ、もしかしてそれで?」 「ああ、違う違うよ!?」 拳二個分くらい空いていた僕らの距離がもっと近くなる。腿には手も添えられてるし、今にも溢れそうな瞳に嘘は付けなかった。 「た、単に……」 「単に?」 「……呼ぶのに慣れて、いなくて」 「……はい?」 「だ、だってほら!男子同士だって名字呼びでしょ?!高校の時、なかった?中村〜とか、赤井〜とか!だから………その、下の名前で呼ぶのが慣れていなくて……」 嘘じゃない。僕らだって最初は名字呼びだったんだから。 「……そっか。そうでしたか」 姿勢を戻した彼がどういう風に捉えたのか分からないが、横顔から柔らかな笑みが見えていた。 そういえば、滝谷君が敬語になる時って未だにどんな時か分からないな。あ、また心の中でそう呼んじゃった。慣れなきゃいけないのに。 「じゃあ、君はなんで僕を下で呼ぶのかい?別に怒ってる訳じゃなくて」 「ああ。それなら簡単ですよ?」 「簡単?」 「うん。一番変わらない……特別な名前で大好きな人を呼んであげたいからさ」 「……うん?」 僕がこの意味を分かるのはもう少し時間が経ってからのお話。

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