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新学期
「それじゃぁ、環境美化委員は大槻 、よろしくな」
我関せずと、窓の外をただボォーと眺めていた。
始業式が終わってのホームルーム。
確か委員会の役員決めをするとか言ってた。
「大槻?」
担任の景山璃都 が俺の視界いっぱいに急に現れ、びっくりしすぎて椅子から転げ落ちた。
「おいおい、大丈夫か?」
「いきなり現れるなよっ!」
「声は掛けたぞ?返事をしない大槻が悪い」
自分の席の周りの奴らは皆頷いている。
どうやら周りの話を聞こえないくらい意識を外に集中させていたらしい。
転げ落ちた恥ずかしさを堪えつつ、椅子を戻して座り直す。
「環境美化委員は大槻蓮弥 、お前に決まったからな」
「はぁ!?」
「だってお前立候補しただろ?」
立候補なんてした覚えない。
外を見ていた時、綿みたいな気持ちよさそうな雲があったから、それに手を伸ばしたことはあったかもしれないけど…。
もしかして、それを立候補したと思われたとか?
冗談じゃない。
「立候補なんかしてない」
「もう決定したことだから覆らないぞ」
「でも…」
「大丈夫。委員会活動は月一回だし、そんなに時間かからないから」
担任は俺の家の事情を知っていて、耳元でそっと囁いた。
耳が弱い俺は真っ赤な顔で囁かれた耳を両手で押さえた。
ここで騒いだところで覆ることもなさそうだし、月一回程度の活動ならなんとかなるかもしれない。
自分が人の話を聞いていなかったツケだと思って納得するしかなかった。
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