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危ないバイト
俺の家は母子家庭で、俺の下には四人の弟妹がいる。
父親は酒に溺れて、いつも母や俺達に暴力を振るってきた。
やっとの思いで離婚できてからは俺は少しでも母の助けになりたくてバイトを始めた。
でも所詮高校生の時給。
生活費の足しになるには雀の涙ほどでしかなかった。
子供五人を育てるために、母は昼夜問わず働いた。
そのせいで体を壊して今は入院している。
入院費と学費と生活費。
これらを捻出するためにはバイトを掛け持ちするしかなかった。
コンビニ、工事現場、引っ越し屋…。
長期から短期までありとあらゆるバイトをしたけど、全然足りなかった。
そんな時、新しいバイトを探している時、いつもなら無視するような広告に目が釘付けになった。
『あなたの体一つで大儲けしませんか?』
この手のバイトは基本危ないから絶対手を出さないと決めていた。
だけど現状は喉から手が出る程にお金が欲しい。
既に家賃二か月分滞納している。
次滞納したら退去してもらう、と大家に先日忠告されたばかりだった。
恐る恐る広告をタップする。
ギラギラとしたホーム画面が現れた。
慎重にスクロールしていくと、下着姿や上半身裸の男や女の写真が並んでいた。
名前、年齢、攻め・受け希望、金額。
売春の掲示板だった。
貼られている人達の書かれている金額の相場は三万から五万。
仮に三万を三回こなせば九万。
それだけで二か月分の家賃に相当する。
背に腹は代えられない。
覚悟を決めて書き込むことにした。
◇ ◆ ◇ ◆
まずは写真を撮らなければならない。
人気のない数学準備室に忍び込んだ。
男性の写真を見ると、だいたい皆上半身裸で、厚い胸板や割れた腹筋を撮っている人が多かった。
中には片手で少しズボンを下げている、少しエッチな写真を撮っている人もいた。
肉体系のバイトをしていたおかげで、体は引き締まっている。
ブレザーを脱ぎ、ネクタイを外す。
シャツを脱ぐのは抵抗があったから、ボタンだけ全部外して胸と腹を少しだけ見えるようにして右上からのアングルになるようにカメラを構え、シャッターを切る。
何度か撮るけど、うまく撮れない。
ブレていたり、撮りたい所がフレームアウトしていたり…。
元より写真を撮るのが苦手なのに自撮りしようとしたことが間違いだったのだ。
最後の一枚を撮ろうとカメラを構えた時、いつもなら開かないはずの数学準備室のドアが急に開いた。
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