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発覚
「大槻…何やってるんだ?」
「いや、えっと、これは…」
嫌な所を見られた。
上半身半裸で、自撮りしてるなんて、どう言い訳したっておかしいと思われるだけだった。
少しでも景山から距離を取りたくて脱ぎ散らかした物を拾いつつ後退る。
しかし、景山もそう簡単に逃してくれないようで、離した距離の分だけ詰め寄ってきた。
トン、と壁に背があたり、これ以上下がれないことを悟る。
顔の横に両手をつき、目の前が景山でいっぱいになった。
「もう一度聞く。何やってたんだ?」
「……」
「言えないことなのか?」
言葉を発しない代わりに、コクリ、と頷いた。
「それってこれに関係しているのか?」
景山が指差していたのは、俺の携帯で、そこには先程まで起動していたカメラではなく、少し前に見ていた売春の掲示板だった。
後退っている間に誤って操作して表示してしまったようだった。
咄嗟に後ろ手に隠す。
その行為が景山の言ったことを肯定する行為であることに気付くまで少しの時間を要した。
「もう書き込んだのか?」
「まだ…」
「でも、書き込む気ではいたんだろう?」
「……」
「いくらだ?」
「は?」
「いくらで売ろうと思ったんだ?」
「三万…」
「お前なぁ…」
落胆した景山の声に少なからずショックを覚えた。
中学の頃からずっと苦手だった数学。
それは高校に入っても変わらなかった。
だけど、その考えはあっという間に覆された。
数学の担当が景山で、景山の教え方はすごく分かりやすく、気付くと苦手科目から得意科目に変わっていた。
数学だけはいつも上位をキープできた。
『景山に褒められたい』その一心で勉強もがんばれた。
いつしか景山を目で追うようになっていた。
自覚した時には大輪の恋の花が咲いていた。
誰にも打ち明けたことのない秘密。
景山本人にも打ち明けることのない気持ち。
大好きな景山を落胆させてしまった。
でも、生きるためには仕方ないことだった。
「先生、ごめん」
「お前の家庭の事情は分かってるつもりだ。でも、何でこれに手を出そうと思った?」
これ以上景山を落胆させたくなくて洗いざらい話した。
ただ黙って景山は話を聞いてくれた。
全部話終わった。
あとは処分されるだけ。
見つかったときの覚悟なら投稿しようと決めた時にできている。
景山はただ俺の目をずっと見据えたまま微動だにしない。
ただ、それが怖かった。
「お前、この後時間あるか?」
「ある」
「それなら制服を正して荷物をまとめて、今から十分後に駐車場に来い。いいな」
それだけ言い残して景山は颯爽と数学準備室から出て行った。
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