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[第1話]憑かれ男子

短編/全10P/憑かれ体質/大学生/主人公受け/憑依/身代わりエッチ/オカルト/ちょっぴり切ないお話 * * * * * * *  人には誰しも人に言えない秘密があると言う。  そう。一見して平々凡々な俺にも、実は誰にも言えない秘密がある。俺は普通の人間には見えないモノが見えてしまうのだ。 「…………」  ホント、いい加減勘弁してくれ。さっきから俺の机に両手をかけて、顔だけ出してにんまり笑ってるお前、お前のことだよ。  室内なのに薄汚れたグレーのパーカーのフードを目深に被り、その顔色は青白いを通り越して土気色だ。どんな死に方をしたのか、口の端が大きく裂けて、赤黒い血がだらだらと流れている。その風貌はまるでチェシャ猫、いや、某怪奇人気漫画キャラクターのネズミ男のようだ。  って言うか、こいつのことを肉眼で見えてるのは、実は俺だけなんだよな。鏡越しに見ると黒い影、写真に撮ると見事なまでの心霊写真が出来上がるはずだけど。  まあ、危害を加えて来ないから、この霊は恐らく事故かなんかで構内で亡くなった元学生なんだろう。事故で亡くなった人間は自分が死んだことに気付かないから、いつまでもこうして自分が死んだ場所をうろついている。  この霊は恐らくは地縛霊で、現世には未練を遺してないはずだ。つまり、彼は悪霊の類ではないから一安心。そう思っていたのに、元学生らしきこの地縛霊くんは何故だか俺の後を着いて来た。  ありゃりゃ。地縛霊じゃなかったのか。口が裂けてるし、おまけにとんでもない顔色をしてるけど、よく見るとフードに半ば隠れた顔はなかなか整った顔をしている。  彼の格好からすると、死んでから差ほど経ってないはずだ。ファッションのことはよくわからないけど、最新ファッションってこんな感じじゃなかったか?  去年、うちの大学で転落事故があったって先輩が言ってたから、それが彼のことなのかも知れない。誰にも憑いてないみたいだから事故だと思っていたが、もしかしたらこの教室の窓から誰かに突き落とされでもしたのかも知れないな。  その犯人が誰だかわからないから突き落とされた教室をうろちょろしてたけど、俺(自分が見えるやつ)を見付けて後を着いて来たってことか。それにしても、入学早々ついてない。 「はあ……」  俺は自分の後ろを着いて来るイケメンな幽霊を見て見ぬふりをしつつ、大きな溜め息をついた。

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