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憑かれ男子 08
実は、こういった場面に遭遇したのは今回が初めてじゃない。俺が取り憑かれる霊は老若男女を問わないが、霊が男性同性愛者だった場合、ほぼ百パーセントの確率で攻める方じゃなく、受けて立つ方だったりする。
何故か男は同性愛者以外に憑依されたことがない俺は、年齢=彼女いない歴で童貞のくせに後ろのバージンはとっくの昔に失っていたり。だから、
「あ……ん」
こう言うことにも慣れっこで、俺は意識して身体の力を抜いた。
困ったことに、憑依されてしまうと俺と俺に憑依した霊の感覚はシンクロしてしまう。意思の疎通は言葉にするかどうかで決まり、俺が考えてることが霊に漏れることはないけど、俺も俺に憑依している霊も気持ちいいことは素直に気持ちいいもので。
「やっぱやばいかな……。中身はともかく、身体は玲じゃなくて後輩のものなんだもんな」
そう言いながらも拓海先輩は、服の上から俺の身体を撫で回して来る。
「……ひゃっ!」
シャツの上から乳首をぎゅっと抓 られて、俺は思わず声を上げてしまった。
「やばいよなあ……。玲はともかく、こいつは当然バージンだろうし」
なんですと!?
二人は惚れた腫れたの関係じゃなかったみたいなのに、どうやらやることだけはしっかりと致してしまっていたらしい。カウンセリング云々を先に聞いてたからか、俄かには信じがたいけど。
そこで玲先輩にだけ聞こえるように、バージンじゃないからいいよと二人に伝えてみる。まあ、憑依された俺の声が普通の人間に聞こえることはないんだけど。
「加藤君がさ」
「加藤君?」
「身体を貸してくれてる一年の子。彼がもうバージンじゃないからいいよって」
「マジか?!」
そんななか、二人のそんな日常会話のような何気ない会話が嬉しくもあり、気恥ずかしかったりもして。まるで二人の日常を垣間見たような穏やかな空気間のなかで、俺は息を詰めた。
クスクス笑いながらコトを進めていく二人を間近すぎるほど間近に感じて、なんだかもう堪らなかった。
「あ……」
部屋着でもあるらしいTシャツを脱ぎ捨てた拓海先輩の体躯は、思わず息を飲むほど美しかった。適度に鍛えられた胸板や6パックに割れた腹筋は大人の男を感じさせる。
今年で19歳になる俺と二つしか違わないはずなのに、この差はいったいなんなんだろう。
入れ物(身体)は確かに俺のものなのに、二人にはそれは関係ないようだった。いつの間にか全裸に剥かれていた俺の下半身に、拓海先輩は顔を埋めている。
「はぁ……んっ」
その甘い声は玲先輩のものなのか、俺のものなのか、それは俺にはわからなかった。何度かこういったシーンに遭遇したこともあるけど、ここまで丁寧に愛撫されたのは初めてのことだ。
俺は拓海先輩から与えられる無条件の快感に、溺れて行くのを感じていた。
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