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憑かれ男子 09
拓海先輩に後ろから貫かれ、俺は枕に顔を埋めてシーツを鷲掴んだ。
「こら、玲。枕に顔を伏せるな。お前の感じてる顔、俺に見せろよ」
「――あっ、ああっ!」
拓海先輩はそう言ってるけど、その顔は玲先輩の顔じゃなく俺の顔だ。だから、
「お前、可愛いな」
そう言われると、まるで自分に言われているように錯覚してしまう。玲先輩に触れる拓海先輩の手には激しさの中にも優しさが溢れていて、そこまで思われている玲先輩が羨ましかった。
思えば、こんな風に愛が溢れるセックスをしていてもその愛は俺に向けられたものじゃなくて、俺に憑依した霊に向けられたものだ。
こんなにも愛のあるセックスはそうそうないだろうけど、いつか自分も……、そう思わずにはいられない。
「玲っ、出すぞっ」
「あうんっっ!」
拓海先輩はそう言って、抽挿のスピードを上げた。激しい吐精感に目が眩む。
そして――、
「――くうっ!」
「イっちゃうっっ! 拓海っ、拓海ぃっっ!」
二人は同時に射精した。玲先輩は自分の腹の上へ、拓海先輩は先輩の性器に装着したコンドームの中へ。思えばコンドームを使ったそれも初めてで、でもこれが当たり前なんだと思うと感慨深いものがある。
「……加藤君。ありがとう」
「え、おい。玲?」
「加藤君のお陰で誤解も解けたし、拓海に気持ちを伝えられたよ」
(玲先輩……)
「これでもう思い残すことはない」
「ちょ、玲? おま、何言って……!!」
「拓海。大好きだよ」
「――っっ、玲!!」
「……あ」
自分の身体から何かが出て行く感覚がして、次の瞬間には、俺は自分の声を取り戻していた。
「……ごめんなさい、拓海先輩。玲先輩、逝っちゃったみたいです」
「なっ、おま……加藤か?」
「はい」
拓海先輩のは、まだ俺の中に挿入されたまま。
「……んっ」
拓海先輩のが抜ける時、思わず甘い声を漏らしてしまった。慌てて口を塞ぎ、取り敢えずシャツを着て居住まいを正す。
「……玲さ。成仏したのか?」
「はい。多分」
「そか」
「はい」
俺の向こうに玲先輩を見ているのか、正面からきつく抱きしめられた。玲先輩が出て行く寸前まで、何度も唾液を交換し合った唇が熱い。
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