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プロローグ【1】 そんな好条件で転生させてくれるんですか?

ボクはどうやら死んだらしい 勉強を死ぬほどして有名大学の奨学生に選ばれ、田舎から憧れの東京に出てきてバラ色の未来が広がるはずだったのに、ボロアパートの1つしかない部屋でボクは死んでしまった 彼女が出来たこともない、どこにでもいる平凡な容姿のボクは大学で学びつつアルバイトに精を出し将来自分で起業するために生活を切り詰めていた。 大学1年目の寒い冬、暖房費節約のため部屋で練炭を使ってカレーを作っていた。部屋もあたたまるし一石二鳥だ。カレーはいい、1度作ると5日は食える、冷蔵庫もないから冬しか出来ない技だが。 賢明な人ならば既にボクの死亡原因がわかっただろう。 そう練炭は危ないと…ボクは知らなかった。 寒さ予防でボロアパートの窓という窓に目張りをし、ドアの下の隙間も隙間予防のダンボールを貼り付けて暖気を逃すまいとしていた生活の知恵が仇となって、ボクは眠りながら一酸化炭素中毒で死んだようだ。 なぜ死亡原因を知っているかと言うと、ボクの前に現れた神様が教えてくれたからだ。キリスト様のようなベタな格好の神様は、そんなボクを不憫に思い1つの提案をしてくれた。 『異世界転生した先で王様になれたら現世の体に生き返らせてあげる』と。 平凡で勉強以外取り柄のないボクが王様になんてなれるんだろうか? ――――――――――――――― 転生したボクは生まれたての赤ちゃんだった。 とても美しい母様の乳を飲むのは、とてつもなく恥ずかしかったが、生きるため必死に吸い付いた。現世では、女の子と付き合ったこともない童貞だったボクが、いきなり絶世の美女の豊満な乳にありつけるとは神様GJです! そして威厳のある父様は、なんと王様だった。 そうボクはエーリス王国の第一王子として生を受けた。 (なにこれ?イージーゲームじゃん?) もう王様になるの確定でしょ。このあと弟でも産まれて争わなきゃなんだろうか? それとも悪どい叔父でも現れて国を追われるのか? そんな心配は杞憂で、兄弟姉妹が生まれることもなく、唯一の跡継ぎとして大事に大事に育てられたボクは母様そっくりの美しい容姿を持って産まれたようだ。 光の加減で淡いブルーに見える艷やかなプラチナブロンド。エーリスの民の特徴である白い肌は誰よりも透き通るように白く、プックリと桃色に色づく頬、ライラック色の瞳 ちょこんとした可愛い鼻と唇はボクを儚い美しさで彩っていた。 神様大サービスだな優しすぎかよ。 国民に愛されスクスクと育ったボクは15歳になった今日、大国シアーズ皇国に留学する。 シアーズ皇国はエーリス国を含む15もの国を束ねる、例えるなら大親分の国だ。エーリスは100年ほど前にシアーズの属国となったが、自治権を得て1つの国として機能している。他の国も似たようなものでシアーズ皇国には逆らえず、いざシアーズ皇国が戦争をおこすと兵を出さないといけない。 ボクが王様になったら兵を起こしシアーズ皇国から独立し完全自治を目指す!――― なんてことはしない、だってボクのゲームクリアは王様になればいいだけなんだし、エーリス国の未来にはあまり興味はない。 さっさと留学を終え、国に帰り王位が回ってくるまでノンビリ暮らそう。 元の世界に戻ったら練炭なんか使わず灯油のストーブにしようと固く誓った。

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