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第1章 シルヴァリオン 【11】問題しか無いんですけどー!?

唇に柔らかいものが触れてきたと思ったら、0距離で超絶イケメン皇子の顔があった。 これは…キス!????? 現世で18年、転生後の15年 合計33年も守り通したファーストキスが、超絶イケメンとはいえ男に奪われた。 唇がユックリと解放された後、腰に響くようなイケボで「好きだ…」と切なそうな瞳で言われるが、こっちはそれどころじゃない。 「ボクは男ですけど…」小声で言ってみると「わかってる問題ない」の返事が返ってくる。 いやいやいやいやいやいや!!問題しか無いんですけどー!? シアーズ皇国は同性婚も認めていると聞いている、そういう面でも先進国だが、日本でもエーリス王国でも同性の恋愛は、いまだにマイノリティだ。 「愛してるんだ、私の皇子妃になってほしい」 いやいやいやいやいやいや!!あんたイッパイ婚約者いるんでしょ!? ボクは王になってゲームクリアするんだから、皇子妃になんてなってる場合じゃないんですよ!? 「無理です」と断ると捨てられた犬のような顔をした。 いや反則でしょその顔、こっちが悪いみたいじゃないの。 ファーストキスを奪われたショックと、親友になれてると思ってた男の行為に、不覚にも涙がこぼれてしまった。 背後にシアーズの夜景を背負ったチョーイケメンが、眉間にシワを寄せ困ったような顔をした。 その後、ボクはリムジンで一人で皇子宮に帰らされて、オーディンが戻ってくることはなかった。 次の日の朝もオーディンは帰ってきてなくて、ボクは黒服さんに促され一人で学園に登校した。 (断ったことショック受けてたみたいだな…) 断られたことなんて、ないのかもしれない。 でもファーストキスを男に奪われたボクもショックなんだ、被害者はこっちですけど。 オーディンがいない学園はひどく居心地が悪かった。 昼休み、いつもの部屋で昼食を食べているとき、黒服さんに「オーディンは?」と聞くと王宮で仕事らしく今日は学園に来ないらしい。 (ホントかな…昨夜のことで顔会わせづらいからいいけど) 会わなかったら会わないで、どんどん気まずくならないだろうか? できれば笑顔で『冗談だった』とか、『ごめんごめん、お互い忘れて親友になろう』とか言ってくれないだろうか。 その日も次の日もオーディンは帰ってこず、お風呂もご飯も学園も一人ぼっちだった。 ボクはだんだんと腹が立ってきた。 (オーディンはボクに意地悪をしてるんだ) 学校に向かうリムジンの中で、ボクは黒服さんに昼食はいらないと告げた。 オーディンがいないなら、あそこで食べる必要もないのに、黒服さんがダメだと言う。 「そんな事言われる筋合いはない!ボクはボクのしたいようにするからほっといて!」怒りが爆発してしまった 午前の授業を終え、食堂に行ってみた。 高等部専用の食堂は結構賑わっていた。 食券でも買うシステムなのかとウロウロしてたら、コックさんに『どれでも好きなの持っていっていいんだよ』と言われた。 無料のビュッフェスタイルのようだ、天国かよ。 お皿にイッパイ好きなのだけを盛り、窓際の空いてた席に座る。 周りの席を見ると、仲良さそうにおしゃべりしながら食べる生徒たち。 ボクはオーディンと一緒に楽しく食べてたことを思い出しシュンとなる。 (なんでこうなっちゃったんだろ) 留学してから友達が出来なくても平気だったけど、さすがに本当のボッチは堪える。 お皿の料理はまだ残ってたけど、食欲がなくなり片付けようと立ち上がると「ここいいかな?」と誰かがボクに話しかけてきた。 大きなその人は、襟元の学年章の色を見ると最上級生のようだった。 座り直し「どうぞ」と言うと人懐っこい顔で笑ってくれた。 (これは友達になるチャンスでは―――?) ボクは料理をつまみつつ、チラチラと隣の上級生を見る。 目が合うと「あ!それ美味しくないでしょ」とボクのフォークに刺さってるウインナーを指差す。 この食堂の美味しくないランキング1位なんだそうだ。 (この人にはボクが見えてるんだ…普通に会話してくれる嬉しいな) この窓際の席がお気に入りだとか、これだけは食べたほうがいいランキングとか話は尽きない。 食べ終わってしまったボクが、まだお話してたいなとモジモジしてたら、上級生がボクの左腕の半袖シャツをまくりあげた。 「ここ赤くなってるよ」指さされた場所は、自分では見えない腕の裏側だった。 (虫刺されかな…?)温暖なシアーズにはエーリスではいなかったダニや蚊がいるのかもしれないな。 楽しい昼休みだったけど、この日もオーディンは夜になっても帰ってこなかった。 赤くなってた腕に、黒服さんに虫刺されの薬をもらって自分で塗った。 よく見ると内ももや背中にも、赤い痕が見えてゾッとした。ボクは虫が大の苦手なのだ。 防虫剤的なものはないのかと聞くと、虫よけハーブを渡された。 明日学園に行く前に、布団と【タカハシサン】を日光に干そう。

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