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第3章 二人の未来 【1】齟齬

目覚めたボクはベッドの上で身動きが出来ない状態だった。 腕を動かそうにも、シーツの下で手首を拘束されているようでビクともしない。 足も同様に動かせなかった。 ベッドサイドにいた白衣の人を見て叫び声をあげてしまったが、その声は自分のものとは思えないほど、しゃがれていた。 白衣がとてつもなく恐ろしかった。 「た゛す…ぇ…ぁえ゛か…ぐぅっ!!―――い゛たぁ…ぁ…」 助けを求めたはずが、全身の痛みに悶えた。 (何…?なんでこんなに全身が痛い?なぜ拘束されているのか?なぜ白衣がこんなにも怖いのか…) 白衣の人から顔をそむけると、そこには叱られた犬のような顔をしたオーディンがいた。 あの日、キモデブに襲われたボクはオーディンに助けられ、皇子宮に戻り自分からオーディンを求めたんだった。 そして「優しくする」という約束は反故にされ、今に至る。 白衣の宮廷医師によると、発熱・意識混濁・全身の筋肉痛・後孔裂傷と絶対安静の状態だったらしい。 やっと目が覚めた今日はあれから2日も経過していた。 意識不明になるまで(いや、なってからもか?)オーディンに抱き潰され、意識を取り戻さないボクに医師が触れることを拒んだオーディンは、子供の頃からお世話になっているこの老医師に、こっぴどく叱られたらしい。 老医師によるとシアーズ王家は精力絶倫で、エーリス民のような華奢な民族を相手にする時は、かなりのガマンが必要だという。 1日に数人の妃を抱くなど工夫をしないと今回のような事態になるのだというが。 (そんなこと先に言ってよ…) 意識が戻りかけた時、点滴の針を抜こうと暴れたために拘束したそうだ。 ボクは子供の頃ハチに刺されてから注射が大の苦手だった。 それから2日後ようやくボクはベッドから降り、アヒルのような歩き方だがトイレにも行けるようになった。 ボクの部屋に大きなソファを持ち込みオーディンはそこで眠り、昼夜を問わずボクの世話をした。 それこそ食事の世話から体を拭くことやら下の世話まで、全部オーディンがやった。 こうなったのはオーディンのせいだし誰にもボクを触らせたくないらしいから、どうせ誰にされても恥ずかしいのだからとボクも甘えた。 更に数日後、やっと普通の生活がおくれるようになったボク。 「明日から学園に行けるかな?授業随分遅れちゃったけど…追いつけるかな?」 もともとシアーズはエーリスより授業が進んでて、ボクは遅れ気味だったから心配だった。 エーリスの王子として留年だけは避けたかったのに、オーディンの返答は予想を遥かに超えていた。 「学園に戻る必要はないよ、このまま皇子宮で婚礼の日まで美しさを磨くといい」 満面の笑みのオーディン (いやいやいやいや!イヤイヤイヤイヤ!!なんで?どうして?婚礼?はぁっ!?) 開いた口が塞がらなかった。 そりゃ…あんな目にあって、ヒーローみたいに助けに来たオーディンがカッコよくて、好きって言っちゃったけど。 だからって結婚!? ボクはエーリスの王にならなきゃ現世に帰れないんだし!オーディンと結婚なんてしたら王になれないじゃないか! ボクの表情を見てオーディンの顔色が変わった。 部屋の温度が氷点下に下がった。……気がした。 それでもボクは必死に訴えた、エーリス国の跡継ぎはボクだけだし、どうしても王になりたいんだと。 立派な王になって、後進国のエーリスを発展させるためにも、あと5年ある留学期間は勉強をがんばりたいのだと。 なのに… いや、そのせいか その日からボクは皇子宮から一歩も外に出られなくなった。

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