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最終章 永遠に 【1】リターン

それはすさまじい衝撃だった。 叩きつけられるように元の体に戻されたボクは身動き1つできないでいた。 (神のバカ…死後硬直!脳死!)止まっていた体の隅々に血液が流れ出す。 オーディンの叫び声が聞こえる。早く止めないと…なのに指1本すら動かない。 あ…?目がちょっと開いたよ?ナイス!  綿さん!泣いてないで見て!?ボクを見て―――!! 「ひぁあああああああああああ!ひぃ…ひぃっ…妃殿下がっ!?」 後ろに倒れ腰を抜かしたように座り込む綿さん。 ひぁああああああ ってひどくなーい?そんなオバケ見たみたいな。失礼しちゃう。 グギギギ…首を動かすのも苦労するなぁ、ああ、やっと見えたオーディン。 「シル…………」 剣を落とした、あーよかったボクの愛するオーディンのきれいな顔や体は無事そうだ。 震える手がボクの頬を触る。 「夢…か?」 ようやく動くようになった腕をオーディンに伸ばす。 あーあ人前なのにこんなに泣いちゃって…。二度と見れないであろうオーディンの泣き顔を堪能する。 「夢じゃないよ、ただいまオーディン」 オーディンの頭を抱き寄せボクの胸に沈め、トクントクンと鳴る心臓の音を聞かせる。 「神がさ…帰れって。オーディンが怖すぎたみたい、フフッ」 「医師を!医師を呼べ!」ボクを抱き起こしオーディンが叫ぶ。 オーディンに抱き上げられ腕の中に収まったボクは服の袖を使ってオーディンの頬に残る涙を拭いながら口をとがらせ言う。 「やだよ、だいじょうぶだから。もう注射は死ぬまでしないよ」 あ…の形に開いたままオーディンの唇が固まる。 「だいじょうぶ。ボクはもうだいじょうぶだから。神と約束したからね?オーディンより先には死なないよ、絶対に」 ニッコリと微笑むと、またオーディンの両目から涙があふれた。 も~威厳なくなっちゃうから。オーディンの顔を抱き寄せボクの肩に埋めさせ泣き顔を隠した。 黒服さんたちも抱き合いながら泣いてくれてる。よかったこの世界に帰ってこれて。 祭壇の神を見上げる。 これも全部神様の計画通りだったりして? (どこまでも優しいんだから…ありがとね神様) 月明かりに照らされた神が笑ってるように見えた。

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