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あるいは1つのこんな未来

みつけた―――――やっとみつけた 桜舞い散る入園式の園庭にその人を見つけた。 私より高い背、黒い髪に大きな黒い瞳、ふっくらとした頬にはなぜか絆創膏がある。 隣の母親を見上げ何か話した後、私のほうへと駆けてくるその人を万感の思いで抱きしめようと両手を広げた。 「だーかーらー!がいじんのしりあいなんて、いねーってばよ!!」 プンスカと怒る少年の腰に抱きつき、死んでも離れないと先生に告げる私の横にはオロオロとする両親。 ようやく見つけたんだ「やっと会えた…私だよ?」と言うのにちっともわかってくれない。 「オレは、すべりだい、すんだから!はなせーばっきゃろー」 舌ったらずな話し方で怒りながら、げんこつで殴ってくる。痛いけど嬉しさが勝ってそれどころじゃない。みつけた。生まれてからずっと探してた。大好きだ。もう離れない。 「こいつはバカなのか?!にほんごわかんないのか?」 周りの大人に問いかけるその言葉は、私の母親の血を色濃く受け継いだ金色に近い薄茶色の髪と青い目を見ての発言だろう。威勢が良くてかわいい。 これが今世での私たちの出会いの瞬間だ。 生まれてから何度も夢の中に現れる美しい人、前世の私の妻だということはすぐにわかった。 物心ついてから ずっと探してた。どこにもいないと泣く私に戸惑う両親。そのうち私は両親に心配をかけないように泣くのをやめた。泣く暇があったら探す。いつか会う妻にふさわしい人間になるために学ぶ。そう誓った。 そしてようやく見つけた。見た瞬間に分かった。なのにだ 来世も来来世も一緒だと、どんな姿になってても絶対に見つけると言ってた―――――のに 「しょ~お~ちゃん学校いきまっしょー」 中学校に上がった今も思い出してはくれない幼馴染を朝早くから迎えに来た。 眠そうな顔で菓子パンをかじりながら出てくる愛する人。寝起きが悪くいつもギリギリ。寝癖のついた黒髪が今朝もかわいらしい。 私は目立つ髪を黒く染め、目には黒いコンタクトを入れるようになった。しかし色白の肌と長身で何かと人目を引いてしまう。幼稚園の時、私より背の高かったしょーちゃんを小学校であっという間に追い越してしまった。 しょーちゃんのカバンを取り上げ自分のカバンを持つ左手の脇に挟む。右手でしょーちゃんの手を握り手をつないで登校する。 呆れた目で見てくるが振り払いはしない。あきらめてるようだ。 「今年も神輿かつぐの?」 「あったりめーだろ!今年からは子供神輿じゃなく大人の神輿だからな気合入るぜ~!」 威勢よく、つないでないほうの手で食べかけの菓子パンを神輿に見立て持ち上げる。話す言葉、すること全てが愛しい。 思い出してくれなくてもいい。こうしてずっと傍にいられたらそれだけでいい。 青空を見上げ約束を守ってくれた神へと感謝した。                        fin

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