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第4話
佐賀島の愛撫に興奮を抑えきれない大和は、内股をブルブルと震わせた。
だが佐賀島の指はこれ以上動こうとしない。刺激の足りない大和は、立ちつくす。
「くっ、ぅうう」
佐賀島の睨めつけるような視線を浴びながら、もうこれ以上は限界だと、指先が前に触れようとした。
後ろでの刺激が得られないのなら、自分で自身を扱くだけだ。
しかし、
「イくのはまだ早いですよ」
佐賀島は指を引っこ抜く。
「あっ?!」
「もう一度しっかりと浸かりましょうか。貴方の好きなラブオイルとやらに」
「まだそれ、引き摺るのかよっ」
「ええ、気に入りましたから」
戸惑う大和には目もくれず、佐賀島は大和の両肩に手を添えると、ザブンと湯船に身体を浸した。
「…っ!」
冷えた身体に屋外の湯は熱い。ましてや背後には湯に浸かったままの佐賀島の身体が、夜風に晒されて冷たくなっていた大和に覆い被さり全身を包み込む。
「あっ…やぁ」
大和は己の股座に業火に晒されたような熱い存在を直ぐさま感じた。指を抜かれてヒクつくそこに、佐賀島の象徴がピタリと吸い付く。
「佐賀島っ、の、も…っ勃起、してる…じゃん、かっ」
「…っふっ」
正直な物言いに思わず佐賀島は苦笑した。
大和の淫らな姿を目の前にすると、堪らない感情が溢れ出る。
常日頃から己を律し、一切の感情を捨て、解放することもなく、まるで修行僧のように振る舞う自分の、ドロドロに蟠っていた性根を引き摺り出されるかのように。
この少年とも青年とも言えない、実に曖昧で不確実な人間に、身体も心も翻弄されてしまう。
危うい。
実に危うい。
この感情がいつか身を滅ぼすと自覚している。
しかし、
「大和さんがそうさせるんですよ。分からないんですか?」
「んふぁっ」
密着したまま触れるそこは、外湯と先走りでヌルヌル滑り、佐賀島の手技で艶色を帯びた赤い輪は、キスを求めるかのように激しく呼吸を繰り返す。硬い切っ先で先端が填まりそうなほど抉り上げると、堪らず大和は声を上げ、自ら腰を摺り合わせるように上下した。
「淫乱な腰つきですね、どうして欲しいんですか?」
「…っ!」
無意識下で行っていたことに気づいた大和がハッと恥辱に顔を赤らめた。
だが期待感に溢れた感情は硬くつむぐ口とは裏腹に、身体が正直に反応し、触れた先の脈動が大和の心を焚きつける。
「貴方の口から直接伺いたいのですが?」
目で訴えようとするがしかしそれではこの男には伝わらない。
「ああ、それとも貴方のお口はこちらでしたかね?」
髪をかき上げ佐賀島が不敵な笑みを漏らすと、欲情で上気した大和の瞳に涙が溜まった。
「分かって…っんだろぅ、がっ」
最早泣き叫ぶが如く喚き散らす声が辺りに響いた。
「何が、ですか?」
逆上した大和とは真逆に、冷淡な声が背後から忍ぶ。
―――― こんなの、生殺しだ…っ
じりっと大和は岩肌を引っ掻いた。
熱い怒張が股座を擦る。
だがそこまでだ。
何も始まらない。
大和自身の口から言わなければ、この男は何もしないのだ。
こんな状況下に置かれてさえ。
「……っ」
喉が音がする程はっきりと上下する。
「ぃ……れて、欲しい」
大和は再び俯いて、腰を突き出した。
「何をですか?」
先を促すように緩く腰を動かされる。正直そん言葉を口にするのは屈辱以外の何ものでもない。男である自分が、そんな物を求めてしまうことに大和はまだまだ抵抗がある。戸惑いがある。しかし、太股を擦るグチュグチュとした感触が、大和の精神を溶かしていく。
「あぁ……」
熱く滾る硬い怒張がヌルヌルと滑りを帯びて、痺れるように舌を伸ばした大和の唇が、小刻みに震えながらいかがわしい言葉を紡ぐ。
「お……ち…」
「ん?何?」
あやすように髪を撫でられ、大和の身体はゾクリと震え上がった。
「何ですか?」
むちゅりと肉感が大和の耳朶に触れ、佐賀島の、大和の腹に響き渡る低い声と熱い吐息が、大和の脳内を沸騰させる。
「…お……んち…ん…」
「誰の?」
「さが、しま…のぉ…」
抱かれるたびに散々言わされた、救いようのない稚拙な言葉。端から見ればとてつもなく滑稽で、冷静になってしまえばとてもではないが、尋常ではいられない馬鹿馬鹿しい一節。
「かっ、硬くて、太いのっ」
しかし大和の唇からは、一度滑り出してしまえば、後は堰を切ったかのように溢れ出る。
その後の快楽を大和は嫌と言うほど教えられているから。
「長い…さがしまのおっ…ちん…ん…オレのヒクつっ…い…てる……に入れてっ!」
「それは、どこだと教えましたか?」
「っ…」
まだ言わせるのかと、大和の瞳が開かれる。
―――― けどっ、もう…俺…っ我慢、できな…っ
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