10 / 10

.

「映画?」 「そう。今度の週末一緒に行かない?」 水曜日。いつもの様に帰ろうとしたら、委員長に呼び止められそんな事を言われた。 知優と凌はすでに部活に行ったのでこの場には数名のクラスメイトと俺たちしか居ない。 俺は一先ず準備の手を止め、委員長に向き直って話を続けた。 「なんか見たい映画でもあるのか?」 「俺、ミステリー小説とか結構読むんだけど、映画化したやつがあってね。高槻君たちも誘おうかと思ってるんだけど…どうかな?」 ダメ…?と少し下から覗き込む様にして委員長が眉を下げる。 「……」 これは…狙ってやってるんだろうか… 特に用事もなかった俺はその場で了承の返事を返し、委員会があると言う委員長と別れて家路についた。 夜。残りの二人からもOKを貰ったと連絡が入り、なんと無しに帰り際のことを思い返す。 しかしなんだ、別に端から断るつもりは無かったが顔がイイってずるいな。あの綺麗な顔でお願いされると同じ男でもちょっと断りづらい。しかもちょっと好みの顔なのが尚断りづらい。 (同じ人間なのに何故こうも顔面格差が生じるのだろうか…) なんて上目遣いの委員長を思い返していたら少し耳が熱くなってきて、俺は慌てて頭を振って誤魔化した。 止めよう、あんまり考え過ぎるとそれこそ委員長の思う壺な気がする…俺はまだ彼に落ちてやるつもりは無いのだ。 少し早いがもう寝てしまおう、そうしよう。 持っていたスマホを置き電気を消そうと手を伸ばした瞬間、チラリと。俺が行くと返した時の委員長の嬉しそうな顔が、ふにゃりと緩んだ表情が脳裏を過って。 「ッ……、はぁ〜〜〜/////」 俺は思わず伸ばした手を放り投げ枕に顔から突っ伏した。 (あれは反則だろう…) 最初の感じと違いすぎるだろうが、これがギャップ萌えか…?これがキュンですなのか??などと馬鹿な事を考えながら。 今度こそアツい程熱を持ち始めた耳を押さえて、暗くなった部屋で俺は冴えて眠くない目を無理やり閉じ眠りについた。

ともだちにシェアしよう!