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「でさ〜二人して俺のこと邪険に扱うんだから、委員長からも言ってやってよ!」
「ははっ、3人ともほんとに仲良いよね。」
「えぇーこれ仲良いって言うのかな〜?」
お昼休みの非常階段。
踊り場に直座りして、恒例となった四人での食事開始と共に知優が今朝の出来事を委員長に愚痴り始めた。
俺も凌も面倒なので放置していたら不服そうな顔で、もっと俺に優しくするべきだと委員長に主張していた。
「幼馴染みだから君に甘えてるんじゃない?二人のそんなに気の抜けた態度、他にしてるの見た事ないし。」
きっと好きだからこそだよ。そう言う委員長の言葉に尖らせていた口を笑みに変え、知優がニヨニヨしながら詰め寄ってきた。
む、なんだかとてもムカつくぞ。
「え〜甘えてるのか、ほ〜んそうかそうか。なら仕方ないな、俺が存分に甘やかしてしんぜよう、さぁ二人とも!俺の胸n、イタイっ!!なんで殴るんだよ!!」
「気付いたら手が動き出してた。謝る気はない。」
「クッ、これも愛故か…っ」などとほざきながら知優が殴られた肩を押さえて項垂れる。
その姿に俺がもう一発拳を入れてやろうかな…と考えていたら、その前に凌が千尋を宥めに入った。
「はいはいちーくんが俺らを大好きなのはわかったから、アホやってないで早く飯食えば?昼休み終わるよ。」
「も〜、二人とも冷たいんだから。」
ブーブーと声に出しながら文句を言う知優に溜め息を吐きつつ、俺は隣の委員長をジロリと睨んだ。
「と言うか委員長、あいつに余計な事吹き込むなよな、めんどくさい。」
「ん?でもあながち嘘でもないでしょ?俺には彼みたいに気の抜けた接し方しないじゃない。…ちょっと羨まし。」
チラリ。そう言ってお茶のペットボトルに口付けながら横目で流し見られた。
眼鏡のフレーム越しに長い睫毛が見えて、少し戸惑ったのを誤魔化すように惣菜パンを頬張り軽口を返す。
「…委員長はMなのか、変態だな。」
「えぇ?何でそうなるのさ、君ともっと打ち解けたいなって話だよ。」
まぁ、君が望むなら俺は手酷くされても構わないけどね。俺にしか聞こえないほどの小声で告げられた言葉に食べる手が止まった。
「………。」
「君相手なら、犬の真似だって喜んでやるよ。」
「っ……、そう言う事言うなよな…」
「ふふ、本心さ。あと、変態なのは否定しない。」
楽しそうに笑う委員長。クソゥ…最近はそんな素振りを見せて来なかったから油断していた。
不覚にも、彼の首輪をつけた犬耳姿を想像してしまい、しかもちょっと良いなとか思った自分に顔が熱くなった。
これじゃあ俺まで変態みたいじゃないか…いや、彼の顔がなまじ整っているのが悪いのだ。
「あれ?翔空なんか顔赤くね?どしたん?」
ふと、知優が弁当を食べる手を止め首を傾げる。
チッ、目敏い奴め。
なになに何の話してたんだと詰め寄る顔が鬱陶しい。
「別になんでもねぇよ。」
「ホントかな〜?」
「…ただ、委員長はMでド変態だって話してただけだよ。」
「えぇ〜!!いいんちょマジで!?」
知優が尚も食い下がるので先程の意趣返し次いでに俺は委員長を売ってやった。
「ん〜?俺がMかどうかは分からないけど、男は皆狼って言うくらいだし変態ではあるだろうね。」
が、サラリとかわして避けられてしまったようだ。
何が変態ではあるだろうねだ。さっきは言い切っていた癖に。
俺はテンションの上がった知優の喧しい声を右から左に聞き流しながら、吹き抜けの空にひとつ溜め息をこぼした。
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