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お友だちから始めましょう。
「おはよう、蒼井君。」
「おう、はよ。委員長。」
委員長の頑張る宣言から1週間が経った。
最近は無闇に好き好き言われることも付き纏われることもなくなり、普通に他の友人も含めて委員長と四人でお昼を食べている。
委員長は俺だけに構わなくなったが、やはりふとした瞬間に彼の視線を感じるようにはなった。
そしてこの間、地学の授業終わりに冨田先生に呼び止められ、
──「あ、おい。」
「?ぁ…冨田先生。」
「お前最近、碧…委員長と何かあった?」
相変わらずの汚れた白衣を着て、教材の30センチ定規で肩をトントン叩きながら冨田先生が話し掛けてくる。
「え、あー…いや、まぁ…。」
(なんだ?俺怒られるのか?でも別に悪いことは…して、ない?よな…)
「委員長の奴がもう俺とは止めるって。そうか、お前か。」
(あ、これヤバいやつ…)
先生が手を伸ばしてきて、殴られる…そう思ったら、何故かまた頭を撫で回されていた。
「そうか…。ありがとうな…あいつ、嬉しそうだったわ。あんな素直に笑った顔なんて久々に見たよ。」
「あ、あの…でも、」
「分かってるよ。あいつ頑張るって言ってたから。」
俺じゃ無理だったから。ありがとう。
先生は最後にプリン味の棒付きキャンディーを俺に握らせて去っていった。
(また飴……好きなのか…?)──
まさかお礼を言われるとは思わなかった。
…きっと先生も悪いひとでは無いのだろう。犯罪者とか思ってごめんなさい。
でもやっぱ犯罪だよな…なんて失礼なことを考えていたら、クラスメイトに声をかけられた。
「なぁ翔空 、最近委員長と仲良いよな?なんかあったん?」
「ん?この前日直で一緒になってさ。それから何となくな。」
「ふーん?」
コイツは俺の3歳からの幼馴染みで宍戸 知優 。
柔らかそうな栗毛がふわふわして、背は高いが男の癖に可愛らしい見た目をしている。
昼食を一緒に食べている内の一人だ。
因みに俺と知優の席は窓際の後ろから2番目と3番目で、委員長は1番前の席だ。
そしてもう一人のお昼のメンバーは知優の隣で黙々と本を読んでいる高槻 凌 。
剣道部に所属(一年で副主将)、実家は華道の名家、そして年間数百冊を読む本の虫。
物静か、黒髪短髪で顔が良いのでとても女子におモテになる。が、実はとんでもない腹黒で、良いやつではあるが敵には回したくないタイプである。
あとコイツは小学校からの幼馴染みだ。
3人とも大分性格が違うが、今まで大きな喧嘩もせずに高校でもよくつるんでいる。
そこに新しく人が入ってきたらそりゃ気になるよな。
「まぁ俺は委員長いい人だから全然良いけど、女子の視線が更に増してちょっと怖いな。」
「……まぁな。凌は勿論だけど、委員長も結構人気高いから。…と言うかそれで言ったらお前もだからな?」
「え?俺?」
椅子に逆向きに座り背凭れに肘をおいた知優が下から見上げるように首をかしげる。
そんなあざとい仕草も知優にはよく似合う。
「美形3人で俺を取り囲みやがって、一体何の嫌がらせだ?」
「翔空だってモテるじゃん?」
「あ?なんだよ喧嘩売ってんのか?」
「えぇ、そんな怒んなくても…もー、短期は損気だぞ!」
「張っ倒すぞ。」
ポンッと左肩に手を置かれたから、俺は力一杯叩き落としてやった。
お前達のモテるは次元が違うんだよッ
バシンッ!!と良い音がなり俺の心はちょっとスッキリした。
「痛いッ!!暴力反対!!!」
「貴様に窘められると腹が立つ。」
「理不尽な…ッ、凌~コイツ何とかしてよ~?」
甘えた声で隣にしなだれ掛かる知優に、凌は目もくれず本のページを捲る。
「構って貰えて良かったな。俺は忙しいからもう少し翔空に遊んで貰っておいで。」
そう言うと凌は片手で、自分にすりすりしている知優の頭をぐいぐい押し返していた。
言い方は優しいが心底邪魔だというのが伝わってくる。
「いたッ、イタタッ!!ちょっと首折れちゃうから、俺の首そんなに曲がらないからッ!!!」
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