101 / 166
11※
どうしてこうなったのだろうか。何度自問しても答えは出てこない。
「ぅ、ッんん……っ!」
ぐちゅぐちゅと濡れた音がトイレの中に響き渡る。
いくら人気のないトイレだとしてもだ、いつどこで誰が入ってくるかも分からないこんな場所で性器を刺激され、平然としていられる方がおかしいだろう。
「や、め……っ、なだく……っ」
「我慢しなくても構いませんよ」
「っ、ぅ、そ、んなこと……」
無茶なことを言わないでくれ。と泣きそうになりながらも必死に声を堪える。
亀頭を重点的に刺激されればあっという間に射精まで近くなっていくのが分かる。ドクドクと脈打つ鼓動が大きくなり、我慢しようとすればするほどより快感は鮮明になるのだ。
身を捩り、逃げようとする俺を捕まえたまま灘はさらに愛撫する手を早めた。
「っ、ひ、ぐ……っ!」
空いた手で竿の部分を扱かれ、汗が滲む。腰がガクガクと震え、内腿が突っ張りそうになるのが分かった。
やばい、と思ったときには時すでに遅し。
「ぁ、く、ぅ……ッ!」
頭が真っ白になった次の瞬間、小便器に向かって、どぷりと亀頭から精液が溢れ出すのだ。
灘の手によって射精まで追い込まれたことによる恥ずかしさを覚える暇などなかった。射精の余韻でびくびくと震える性器を握り直した灘はそのまま更に亀頭を指先で刺激するのだ。
「っ、ま゛、ぁ……ッ、だ、だめ、今は……ッ!」
「このまま出してください。今なら阻害するものもないので」
「だめ、ほ、本当に……っ、ぃ゛……ッ!」
――このままでは漏らしてしまう。
焼けるような熱が性器の先端部に集まってくるのが分かり、堪らず灘を止めようとするが灘は止めるどころか更に俺を追い詰める。
先程出した精液が残った尿道口を柔らかく穿られ、先っぽを擽るようにカリカリと柔らかく指先で刺激されれば目の前、頭の中が白くなっていく。
「だ、め、も……出る……っ」
「どうぞ」
「ゃ、いやだ、灘くん……っ」
「何故? したいと言ったのは君ですよ」
「っ、そ……だけど、こ、んな――」
そう言いかけたとき、腰を抱き竦めるように回されていた灘の手が腹部に伸びた。瞬間、散々水や食べ物を詰め込まれ、僅かに膨らんでいたそこを思いっきり押さえ付けられたのだ。
腹部から全身へと駆け抜けるその衝撃に目を見開く。
「っ、ぁ、」
一瞬、ほんの一瞬だった。
四肢の力が抜け、腹から押し出されたものが尿道口からちょろりと溢れる。まずい、と思った次の瞬間、その一滴から堰を切ったかのように開いた尿道口から尿が一気に溢れ出した。
「っん、うぅ……ッ!」
添えられた灘の手に頭を軽く持ち上げられ、便器に向かって勢い良く放出する性器。熱が溢れ、ずっと我慢していたものが吐き出されていく感覚に手足が力が抜け落ちそうになる。
「っ、い、やだっ、見ないで……っ、見ないで……ッ!」
勢いを失くしたものの、ぎゅっぎゅっとお腹を押さえ付けられる度に断続的に飛び出す尿とその便器へと叩きつけるような水音に顔が焼けるように熱くなった。
どれだけ止めたいと思っても、一度溢れ出したものを制御出来るのは難しい。
それどころか、濡れた尿道口を指先で刺激されれば緩んだそこからまた尿が出始める始末だった。
膀胱にパンパンに詰まっていたものを全て出し切ったのを確認し、灘はようやく俺を解放してくれた。
「もう出ないみたいですね」
あくまでも灘の態度はいつも遠りで、何事もなかったかのように俺から手を離した。
瞬間、膝から力が抜け落ちる。膝をつき、地べたに座ることからはなんとか免れたが蹲ったまま立ち上がることが出来なかった。
あるかどうかすら怪しい自尊心が、灘を信じていたかったという気持ちが、見事に打ち壊されたような気分だった。
「……これも、会長の命令なの?」
灘は答えない。答える義務もないということか。そう思いかけた時、目の前に何かが落ちる。
それは袋に入った錠剤のようだ。
「漏らさせておけ。替えは用意してあるから速やかに着替えさせろ。定期的にこれを服用させるように」
予め用意してあるなにかを音読するように、淡々とした調子で続ける灘。その言葉は俄信じられるものではなかった。目の前の錠剤を見詰めたまま硬直する俺に、灘は「利尿剤です」と呟いた。
灘の言葉が会長からの言い付けだと理解したとき、言葉を失う。
それと同時に、会長から命令してあるにも関わらず連れ出してくれた灘の意図が読めなかった。
ともだちにシェアしよう!