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そのいち

     某学園で生徒会執行部、会長を務める宮輝雅は両性具有だ。染色体も骨格も男のものだが、下腹部には男性器と女性器のふたつがそなわっている。  財閥解体以前からある由緒正しい宮家の次男として産まれた輝雅。本来であればそんな身体をもって産まれようものなら家族、親類から疎まれそうなものだが、そんなこと一ミクロンもまったくなく、むしろこれでもかと溺愛されて育った。一族総出で輝雅を溺愛した。 「いーい? てるちゃん。てるちゃんも立派な男の子だけど、てるちゃんはすっごく可愛いから、容易に男たちに近づいちゃあだめだからね? 可愛いかわいい、こんな可憐なてるちゃんが無防備に近づこうものなら、男たちはたちまち危ない理性のなくした野生の狼になっちゃうから。だから、絶対に警戒心もなしに近づいちゃあだめよ? あ、あと女の子もだめよ」  と、母親と親族の女性たちに言われて育った輝雅は親族以外の男に対しては警戒することを怠らず、絶対にひとりでは同じ空間にいないようにしてきた。(あと女性に対しての上手いあしらい方を伝授された。)  幼少期はふわふわな天使のような、少女と見紛う美少年だった輝雅は年齢を重ねるごとにかわいらしさから抜け出し、色香のたつ佳人となった。可愛いより綺麗、美しいという言葉が似合う、そんじゃそこらの女では到底かなわないほど、男性的でありながらも女性らしさを伴って成長した。  輝雅は普段はしっかりしており初対面の人間には手厳しいが、一度なれて懐におさめた人間にはどこまでも無防備だった。溺愛されて育ったがゆえに少々世間知らずなところがあり、変なところでネジが一本緩んでいる、もしくは抜けている。そんな天然どじっ子属性を併せ持つ輝雅に夢中になる輩は絶えない。  そんな輝雅が通うことになった学園は男だらけの学校。歴史ある学園であり、通う生徒は輝雅と同じ良家の出。しかし、男であることには変わらない。輝雅がその学園に通うことが決まったとき、兄や母親、親族たちは父親を詰りに詰りまくった。常に威厳に満ち溢れ、凛々しい父親があんなにも情けなく縮こまっていたのは後にも先にもあの時だけだろう。輝雅はそれを少し離れたところで傍観していた。(父親への追及は、輝雅の「ぼくが通いたいって言ったの。にいさまと同じ学校がいいの。だから、とうさまを責めないであげて」という鶴の一声により止まった。父親はその日、泣きながら輝雅を抱っこして床に就いた。)  こうして某学園へと入学した輝雅には常に親族の同い年たちが周りにいた。可愛いかわいい輝雅に惚れて近づこうとする幼い狼を、周りの少年たちが威嚇し遠ざけた。小学一年生にして輝雅よりもしっかりとしていた少年たちは立派に騎士をつとめあげ、輝雅を守っていた。が、そのせいで輝雅は友達ができず(少年たちは常に一緒にいてくれはするが、血縁者であって友達ではない)、それに輝雅はしょぼんと落ち込んだ。「ぼく、お友達がほしい」と小さくちいさく、泣きそうなか細い可愛らしい声でぽつりと呟いた輝雅に少年たちは急いで両親に連絡をいれて、輝雅に近づけても、友達にしても大丈夫そうな子はいるか調べてほしいと頼み込んだ。小学一年生とは思えぬ行動力である。一週間後にできた友達に、輝雅はご満悦だった。  成長し、高校生になった輝雅は絶大な人気と支持により、一年生ながら生徒会執行部の会長となった。もちろん、謙虚な輝雅は一年生である自分が会長だなんて恐れ多い、と断ろうとしたが、前任の会長に逆に泣いて縋られた。(その前任の会長はそのあと、輝雅に許可なく触れていたために、取り巻きに足蹴にされていた。)  輝雅以外、他役員は年上。辛うじて来年生徒会入りする有望な補佐として同学年はいたが、初対面に等しい、友達以外の人間だから気安く喋れるわけもなく。ストレスマッハになった輝雅は部屋に戻ったあと一晩中泣いていた。  その生徒会による環境変化の精神疲労のせいか、中3終わりに始まった月経が不順となり、一時期不登校になりかけた輝雅だったが、取り巻きのひとりに「今ここで逃げ出してはこの先もっと仕事がやりづらくなってしまいます。輝雅様のつらさは重々承知しておりますが、どうか、耐えてください。これを耐えれば、輝雅様のためになります」と励まされたので踏ん張った。そのあと輝雅は励ましてくれた取り巻きのひとりにお礼にと、お菓子を作ってあげた。なんだってできる子、宮輝雅である。(その後取り巻きたちでお菓子をめぐる仁義なき戦いが行われていたことは、輝雅の知ることではない。)    

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