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     生徒会執行部に所属して二年目の秋、今、輝雅は窮地に立たされていた。実際に今輝雅がいるのはベッドの淵だが。 「なあ、宮。お前、その匂い」  超絶男前な端正な顔にそれはそれは楽しそうな笑みを浮かべて、輝雅と対面する男は手元に近い輝雅の先まで美しいつま先に指を這わす。 「っ……、触らないで」  寝るときに靴下を履くのはよくない、と言われて育った輝雅は仮眠の時もきちんと靴下を脱いで眠る。それが今回はあだとなった。まさか、風呂以外で誰かに足を触られるとは思わなかった。  きゅ、と脚をまげて腕でかこう、いわゆる体育座りをした輝雅は、気づかない。股を男の目に触れさせていることに。  閉じられた脚の間でつつましくはさまれているそれを、男は凝視し生唾を飲む。今、この男の目の前にいるのは極上の食べ物だ。舌なめずりをし、じりじりと輝雅に近づく。 「や、近づかないで、こっちに来るなっ」  もう後ずさることのできない輝雅は美しい黒曜石の瞳を涙でうるおし、ふるふると震える。輝雅のそんな加虐心を煽る姿に男は昂ぶりそうになる下半身から意識をそらして少し心を落ち着かせる。 「宮、大丈夫だから。お前にとって怖いことも痛いこともしねえよ。だから、ほら、そこじゃあいつか落ちるから、もうちょっとこっちに来い」  つとめて優しい顔をつくって、優しい声音で手招きをする。警戒心をあらわに震えていた輝雅は男の優し気な顔と声音に、少しほっとしたような顔になり、そろりと近づいた。  近づいてきた輝雅が正座をするので、少し脚をひらくように言えば先ほどまでの警戒心が嘘のように素直に開く輝雅。内心悶えながらその隙間に手を差し込み股に触れる。 「! やぁ……っ」 「大丈夫だから、な? 宮、お前、ここから今、血が出てるだろ?」  安心させるように頭を撫でてやりながらも股を触れる手はいやらしく動く。するすると性器を撫でるように指を上下し、緩やかな愛撫を施す。 「ん、ん……! でて、る……っ」 「なんで? お前、女なの?」 「違う、ちゃんと、男だ……っ、ただ、女の子の性器もついてるだけ……っ」  撫でるように触れていた動きが、次第に手の位置を変え、揉みこむような動きに変わっていく。輝雅はそんな変化に気づくことなく「あ、あ……っ」と可愛らしくいやらしく喘ぐ。性的な接触は初めてな輝雅の身体は素直に敏感に反応を示す。そのことに思考を占められている輝雅は自分の最大の秘密を口にしていることに気が向いていない。 「へえ? じゃあ、両性具有、ふたなりってやつ? ほんとうに? 俺、こういうのちゃんと自分の目で見ないと信じないタイプだからさあ……見せてよ、宮」  信じがたくも本当であれば男にとって、とっても嬉しいことである。全校生徒を虜にするこの男を囲い手籠めにし、孕ませることができるのだから。  男の言葉に素直に頷き、輝雅は膝たちになってベルトのバックルを外しにかかる。白魚のように細く長く、指先は綺麗な桜色。男とは思えぬ美しい指がボタンとチャックを外すさまを見ているだけで男は勃起しかけた。男とは即物的で単純な生き物だ。  しかし、輝雅はなにかを思い出したように、はっとした顔をし、首を振った。 「い、いまは、だめ……今週いっぱいは、無理……っ、ひゃ、あ、あ、っや、だめ、そんな……あぁ!」 「なんで? なんで、だめなの?」  再び手を突っ込み、ぐっぐっ、と力を入れて、輝雅が痛みを少し感じるほどに揉む。少しずつ硬度を持ち始めた輝雅のソレに、男は舌なめずりをする。  急に与えられた痛みを伴う愛撫に輝雅は身体を震わせて、男にしがみつく。もう下半身には力が入らず、腰が抜けている状態だ。 「――ああ、そういえば、血が出てるんだっけか……。もしかして、セーリってやつ?」  男性器から手を放し、すこし奥に指を伸ばして、そこにあるだろうと思われるモノを撫でるようにこする。大げさなほどにビクンッと反応を示した輝雅に男は内心ビンゴとつぶやく。  股から放した手を自分の鼻に近づければ、かすかにかおる血と男を誘う甘い匂い。 「じゃあ、放課後に俺の部屋においでよ。そこで確認させて? 汚しても大丈夫なようにしておくから」 「ん、ん……!」 「よし、約束な。破ったらだめだぜ?」 「わかったぁ……っ」  輝雅がこくこくと頷いたのに男はにんまりと笑って、輝雅の男性器にまた触れる。 「取り敢えず今は、こっちで気持ちよくなっちゃおっか」  それから一〇分間、部屋には輝雅の喘ぎ声が響いた。  

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