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 まさか、まさかそんなわけがあるだろうか。  場所は店の隣にあるとある建物の一室。許可を貰って鍵を開ければ、そこに広がる光景に俺は思わず叫んだ。 「ホアン!リューグ!」 「げ、イナミ……!」 「ヨウ、なんでここに居るアルか?!」  とある部屋の一室、アンティークな造りのベッドの上にて。  一糸纏わぬ女の子モンスターを侍らせ楽しんでいた二人は現れた俺、そして背後の黒羽とテミッドを見るなりぎょっとした。  巳亦曰く、途中で女の子たちと盛り上がって隣の店、連れ込み宿――ラブホテルに行ってるのではないかというから来てみれば案の定だ。  俺は憤慨していた。何かあったのではないかと真剣に心配したのにこれだ。 「あ、なんだ黒羽サン見つかったアルか、それは良かったネ……って等一下!テミッド落ち着くアル!」 「待て待て!俺たちは真っ当にこの子たちが何か知らないか聞こうとしててだな……おわっ!」 「……言い訳はそれだけ?」  俺以上にブチ切れてるのはテミッドだ。元々リューグと険悪だったことは知っていたがもう止める気にもならなかった。  一気に騒がしくなる部屋を後にした。  そして数十分後。 「悪かったアル、いい加減機嫌治すネ」 「……もうホアンに頼まない」 「我明白了 、阿拉も酒は控えるアル」  テミッドとリューグは店の外で大乱闘を繰り広げている。そしてそれを仲裁しに行った巳亦。黒羽はアヴィドに『事情聴取』を受けていて、一人残された俺は同じく手持ち無沙汰のホアンと向き合っていた。  女の子たちは返して一気に静かになった部屋の中、ベッドの上で正座したホアンは「ゴメンネ」と謝ってくるのだ。ホアンが調子のいいことばっか言うやつと知ってるけれど、今回は本当に反省してるらしい。元はといえば俺だって頼んだ立場だ、許していいと思う半面よりによって女遊びなんてと思う自分もいるのだ。 「ヨウ、いい加減部屋の隅っこでむくれるのやめるアル。こっち向くネ」 「……本当に反省してる?」 「してるしてる、大反省アル」 「さっきの娘たち可愛かったな」 「是、是。おまけに名器アル」 「……………………」 「…………っていうのは冗談ネ」  嘘だ、いま絶対さっきの女の子たちのこと思い出してデレデレしただろ。  視線で訴えかけていると、弱ったようにホアンは頭をがしがしと掻く。 「ヨウ、ゴメンネ。お詫びに好きなもの奢ってやるから許せアル」 「テミッドだって心配したんだぞ」 「分かった、テミッドにも食わせるアル。ほら、機嫌治すアル。ヨウは笑顔が似合うネ」  いいながら俺の横までやってきたホアンはこちらを覗き込んでくる。う、俺が押しに弱いというのを知ってのことか。卑怯なり。 「そうやってさっきの子たちも口説いたのか?」 「う、手厳しいネ……」 「けど、まあ……無事でよかった」 「……ヨウ」 「あの店全部探しても見つからないっていうし、もしヴァイスの実験体にされてたらって思ったら心配で仕方なかったんだからな」  ぽす、と軽くホアンの胸を叩けば、僅かにホアンの目が開いた。 「ヨウ、そんなに阿拉のこと心配してたアルか?」 「あ……当たり前だろ、めちゃくちゃ心配したんだからな。なのに、こんな……っ」  羨ましい、じゃない!こんなやらしいことしてたなんて知ってたら心配するものか。  そう憤っていると、なで……っと頭を撫でられた。 「ホアン……」 「心配かけたネ、もう大丈夫アルヨ」 「あ……当たり前だ……」  子供扱いされてムカつくのに、なでなでと頭を撫でられると段々語気が弱くなってしまう。勢いを無くした俺はやり場のなくなった怒りを飲み込む。 「……ホアン」 「ウン?」 「無事でよかった」  呑気に女遊びしてたけど、それでもホアンの姿を見つけてほっとしたのも事実だ。そう見上げたとき、ちゅ、と当たり前のように額に口付けられ驚いた。 「心配かけて悪かったアル」 「ぅ、……ホアン」 「いい加減泣き止むネ」 「な、泣いてねえし……」  驚いたが友愛のキスだったらしい、わしわしと頭を撫でくり回されてぼさぼさになる頭にむっとしつつ慌ててその手を払おうとしたとき、手首を掴まれる。  え、と顔を上げた瞬間、そのまま手首に唇を押し当てられぎょっとした。 「ほ、ホアン……っ?」 「…………」  唇はすぐに離れた。名前を呼べば、ホアンは俺から手を離す。そしてすぐに立ち上がった。 「危ねーアル、黒羽サンに殺されるところだったネ」 「な、何言って……って、おい、どこに……」 「酔醒ましアル。……もうそろそろテミッドたちも戻ってくるネ」  煙管を取り出すホアンはそのまま部屋を出ていくのだ。一人部屋の中取り残された俺は顔が異様に熱いことに気付いた。……俺もまだ酔いが残ってるのかもしれない。ぱたぱたと手で仰ぎながら俺はベッドに飛び込んだ。  熱は冷めそうにない。

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