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「っ、伊波様……」  ごくりと、黒羽の喉仏が上下するのを見て、酷く喉が乾くようだった。  そのままその首筋に顔を寄せ、ねだるように舌を這わせれば、舌越しに黒羽の緊張が伝わってくる。  そして、 「っ、貴方という方は……」  次の瞬間、黒羽の指が閉じた肉をこじ開けるように中に侵入してきた。 「……っ、ぅ……あ……ッ!」  求めていた感触に全身が打ち震える。まだぼんやりとした頭の中、それでも体内に挿入される複数の指に中を掻き回され、堪らず俺は黒羽にしがみついた。 「っ、黒羽さ、……っ、そこ、もっと……っ」 「……ッ、……」 「んっ、ぅ……ッ! そこ、きもち、ィ……っ黒羽さ、……ッ、ぁ、……ッ!」  黒羽は何も言わない。何かを堪えるような険しい顔のまま、中を傷つけないように、それでも的確に俺の弱いところをシコられると堪らなく気持ちよくて、無意識のうちに腰が揺れた。  もっと、と黒羽の腕にしがみつく。その体ごと抱き締められたまま、黒羽は更に奥まで指を挿入させるのだ。 「っ、ふーッ、ぅ、う゛……ッ! ぁ、そこ、くろはさ、ぁ……ッ、あ、ひ……――ッ!」  長く太い指が動くだけで粘膜は摩擦され、臍の裏側を削られる。クリュエルの催淫が効いているのもあってか、普段以上に苦痛よりも倍増された快感の供給に耐え切れず、俺はそのまま呆気なく絶頂を迎えることになる。 「……ッ、は……ッ!」  びく、と小さく震えた性器からは最早精液は出てこない。ガクガクと小刻みに痙攣起こした下半身は黒羽の指を咥えこんだまま、足を閉じることもできないまま俺は黒羽にもたれかかった。 「っ、くろ、はさ……っ、んむ……ッ!」  そのまま名前を呼ぼうとした時、唇を塞がれる。肉厚な舌に唇を強引に割られ、咥内へと侵入してくる黒羽の舌。  黒羽からキスされたことに驚いたが、それ以上に嬉しくて、心地よくて、そのまま黒羽の背中に腕を回そうとしたときだった。  触れ合った舌越しに、苦い味が広がる。 「ッ、ん゛……ッ?!」  驚いて、慌てて黒羽から顔を離そうとするが無駄だった。更に顎を咥えられたまま、喉の奥になにかを流し込まれた。  この目を覚ますような苦味には覚えがある。いつぞやの万能薬だ。 「ん、ん゛~~っ!!」  ぢゅぶ、と唾液を流し込まれ、そのまま喉の奥まで万能薬を飲ませられる。拒むことなどできなかった。上を向くような形で固定されたまま、俺が吐き出すのも拒否するように黒羽は唇を塞ぐ。  ――熱くて、気持ちいいのに、苦い。とてつもなく。  こんなこと、あっていいのだろうか。  そして俺がごくんと薬を飲み込んだのを確認し、ようやく黒羽は舌を引き抜いた。散々咥内を舐っていた太い舌がなくなり、ぽっかりと開いた口を閉じることを忘れたまま俺は嗚咽を漏らす。 「ぅ゛、お゛え……」 「その薬を口にすれば淫魔からの催淫は落ち着くはずだ。……それまでの辛抱だ」 「く、くろはしゃん……騙した……?」 「騙しているわけではない、伊波様のためだ」 「お、俺と……そんなにえっちしたくないの……?」 「そ、そういう問題ではない……そのような言葉、貴方が使わなくていい」  薬が効いてるのか分からないが、苦味とか諸々で頭は更にこんがらがっているようだ。もどかしくなって、俺はそのまま黒羽にしがみついた。 「っ、伊波様……っ?!」 「ん、む……っ!」  さっきの苦い薬の仕返しだ、とその唇に顔を寄せる。キスの仕方などわからなくて、犬みたいにぺろぺろ舐めることしかできない。それでも片目だけを見開き、驚く黒羽の後ろ首に手を回し、逃げないようにしっかりとホールドしたまま唇をちゅ、と押し付けた。 「っん、む……っ、好き、好きです、黒羽さん……っ俺のこと嫌いにならないで……っ」 「っ、ま、待て、伊波様……ッ!」 「もっかい、もっかいしたい、黒羽さんときもちいこと……っ」 「伊波様……っ!」  薬が効いて現実に戻る前に、腹に溜まっていたものを全部出したかった。そのまま黒羽の制服に手を掛け、上着を脱がそうとするが上手くいかない。あれ、どうして。そうなんだか泣きそうな気持ちになりながらガチャガチャしてると、眉間に更に深く皺を刻んだ黒羽に抱き締められた。 「っ、う、や……黒羽さん……ボタンどこ……」 「……伊波様」 「お、俺……そんなにガキなのかな」 「……黒羽さん、俺のこと興味ないのかな」性的興奮が落ち着いてきたと思えば、次にやってくるのは情緒不安定だ。クリュエルに掛けられた術のせいなのかもう分からない、けど自分がみっともない真似をしてしまったという自覚をしてしまえば不安が広がってきた。  黒羽さん、とぽろ、目から涙が溢れたとき。黒羽に唇を塞がれた。今度はなんの薬を飲まされるのだろうか、そう身構えたが、先程のような恐ろしいほどの苦味もなにもない。ぬるりとした熱い長く舌が絡められ、そのまま喉の奥、上顎を滑って舌の付け根ごと舐られた。 「っ、ん、ぅ……ッ!」  短いようで長い、濃厚な口づけだった。黒羽がなにを考えてるか分からなくて、それでも黒羽にまたキスしてもらえたことに心が勝手に喜んでいる。悲しい気持ちも不安もいつの間にかに薄れるほどのキスに、俺は堪らず黒羽にしがみついた。  そして、ぢゅぷ、と濡れた音を立てて舌が引き抜かれる。はあはあと肩で息をしていると、至近距離で黒羽に見つめられるのだ。 「……興味などなければ、とっくに貴方のことを抱き潰してる」 「そんなことも分からないのか」そう、頬に手を添えられたまま真っ直ぐに覗き込まれる目に心臓が止まりそうになった。

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