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22※
「く、ろは……しゃ……」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
唖然と目の前の黒羽を見上げたとき、顔を手で押さえた黒羽はそのまま、はあ、と大きな溜息を吐く。
「全てはあの淫魔のせいだとしても、貴方にここまで溜め込ませたことについては自分にも否はある」
――認めよう、とその唇は動いた。
そして、伸びてきた手に頬を撫でられる。そのまますり、と硬い掌全体で撫で上げられ、前髪をかき上げられた。
照明の明るさに思わず目を閉じたとき、視界が陰った。こちらを覗き込む黒羽の視線が絡む。あのときとは違う、いつもの黒羽だ。
「っ、ぅ、あ……っ」
「――こうなってしまった責任は、取る。……しかし、貴方も貴方です。伊波様」
「く、ろはさ……ん、む……っ」
近付く黒羽に思わず背伸びしてキスしようとしたとき、そのまま顎を掴まれ、唇を塞がれた。
熱い、熱くて蕩けてしまいそうだ。
――俺、黒羽さんのこと怒らせてるのに、気持ちよくなってる。どうしよう。
そんなことを考えながらも、噛み付くようなキスに何も考えられなかった。黒羽さん、とその背中に腕を伸ばし、目の前の黒羽に擦り寄る。
制服越し、黒羽の体が硬直するのが分かった。
「……っ、伊波様」
「おれ、怒らないよ……っ、黒羽さんになら、なにされてもいいから……」
そう呟いた瞬間、黒羽の額にびきりと青筋が浮かぶのが見えてしまった。あ、と思った次の瞬間、伸びてきた大きな手に腿を掴まれる。
「っ、黒羽さ……っ、ん、……ッ! う……ッ!」
「……ッ、貴方は、本当に酷い人だ」
ビリヤード台の上、そのまま大きく脚を開かされる。今の俺に羞恥心というものはなかった。黒羽たちにいじられ、口を開いたそこからとろりと体液が溢れた。
そのまま俺の下腹部に顔を寄せた黒羽。なにをされるのか一瞬分からなくて、痺れる頭の中黒羽の頭を見ていたときだ。
「っ、ん、う……ッ!」
下腹部、開いた肛門に這わされるにゅるりとした舌先に下半身が震えた。驚いて視線を下げれば、黒羽が俺の尻の穴を舐めているではないか。
「っ、く、ろはさ……っ、そ、そこ……ッ、ぉ……ッ!」
「……っ、何か問題でもあるか?」
「き、たない……っ、」
「伊波様の体で汚いところなんてあるわけないだろ」
即答だ。そう言って、俺の肛門を広げ、更に奥の肉の壁を掻き分けて突き進んでくる舌に全身が甘く痺れる。
「っ、ぁ……ッ、ん、う……ッ!」
や、やばい、これ……なにも考えられなくなる。
肉厚な舌先に掻き回され、際際までねっとりと舐られる。黒羽の髪や鼻先が当たるのがこそばゆくて、粘膜同士が擦れるたびにぐぢゅ、と濡れた音が腹の奥で響き渡るのだ。
「っ、は……っ、ぁ、く、ろはさ……ッ、ぁ……っ!」
夢を見てるような感覚だった。あの黒羽さんが、俺のお尻を舐めてる。
それも、あのときとは状況は違う。今は黒羽はちゃんと意識もあって、俺は……。
生き物かなにかのように蠢く舌に肛門の中を執拗に犯され、あっという間に絶頂まで高められる。それでも普段のような射精感もなく、性器の先っぽがじんじんと熱が溜まったように熱くなる。
先走りに混じってとろとろと溢れ出す精液はそのまま萎えない性器を伝い、睾丸まで落ちていくのだ。それに気付いた黒羽は一旦舌を抜き、それを舐めとる。そのまま睾丸から性器まで、滴る体液ごと舐られれば「うう゛――~~っ」と思わず動物のような声が漏れてしまった。
「っ、くろ、はしゃ……っ」
「……っ、は、甘いな」
「ぁ、あ……っ、く、ろはさんも、おれ……っ」
黒羽さんにもする、と黒羽の下半身に手を伸ばそうとして、黒羽に手首を取られた。
またいつものように『そんなことしなくていい』と怒られるのだろうか、とびくついたときだった。黒羽はそのまま俺の手を握る。
「くろは、さ……――」
どうしたのだろうか、と思った時だった。
もう片方の手で自分の下半身に手を伸ばした黒羽は、そのままベルトを緩める。その下から勢いよく溢れたその性器に、思わず目を見張った。
「わ、ぁ……っ」
「……っ、そんなに見るな」
「だって、黒羽さん……っ、ん、ふふ、俺でおっきくなってくれたんだって思ったら……っ」
逃げようとしない黒羽に嬉しくなって、俺は黒羽と手を繋いだまま目の前に反り立つ性器に顔を寄せる。あんだけ怖かったはずの黒羽の性器が、今はただ愛しくて堪らない。
照明に照らされ、ドクドク脈打つ血管をまとわりつかせて硬くなったそれは相変わらず大きい。俺の頭より大きいのではないかと頬を擦り寄せれば、「伊波様」と黒羽の声が僅かに上ずった。
「……っ、可愛い、黒羽さん」
黒羽の股間の前に四つん這いになり、俺はそのまま舌を突き出し、黒羽の性器にぺろりと舌を這わせる。瞬間、舌越しにどくんとそれが大きく脈打つのがわかった。
「ん、ふ……ッ」
「っ、伊波様……」
拳くらいあるのではないかと思うほどの亀頭を頬張るのには技量も許容量も足りない。だから、せめてと精一杯唇と指で黒羽自身を包み込み、刺激する。
「きも、ひい……っ? 黒羽さん……っ」
ちろりと伸ばした舌で、赤黒く濡れた尿道口に舌を伸ばせば、こちらを見下ろしていた黒羽が息を飲んだ。ああ、と掠れた声で答える黒羽。それと連動するみたいに腹筋が震えるのが分かった。
「っ、ん、……っ、ふ」
「伊波様、無理はしなくて……」
「む、りじゃない……俺、ずっと、またこうして黒羽さんにお返ししたかったから……っ」
だから、俺にやらせてください。
そう亀頭に唇を押し付ける。全部根本まで咥えると顎が壊れてしまいそうなほど太くて大きい黒羽の性器だが、亀頭くらいは、と俺はその先っぽを唇で包み込んでいく。
「……ふ、ッ、ぅ……ッ」
鼻で呼吸することを意識しながら、にゅるりと咥内へと入ってくる亀頭に舌を這わせた。
俺のフェラなんてたかが知れている。それでも粘膜越し、黒羽のものが俺の稚拙な愛撫でも反応してくれてるのがわかって嬉しくなる。
もっと気持ちよくなってほしくて、唾液でたっぷりと亀頭を濡らしてちゅぽちゅぽと音を立てながら先っぽを重点的に責める。
すると、どくんどくんと握り締めた指越しに黒羽の鼓動が流れ込んでくるのだ。そして、焼けるほどの熱に当てられる。
「っ、伊波様……っ、もういい」
「っ! ま、ら……っ、れす……」
「しかし、このままでは……ッ」
射精が近いのだろう。太い裏筋からボコボコと激しい鼓動が伝わってきて、射精が近いことがわかった。
鼻腔から脳の奥まで濃厚な雄臭が満たしていき、思考力は低下していく。
このまま出してください、と答える代わりに俺は黒羽の腰にしがみつく。そしてもっと、とその股間に顔を埋めた。ぢゅぷ、ぐち、と音を立て、亀頭から滲む先走りを吸い出すように亀頭に吸い付いた瞬間、舌の上で黒羽のものが跳ねる。
「っ、く……」
「ん゛、う……っぷぐ……ッ!」
瞬間、咥内に勢いよく吐き出される精液。その量と勢いに全てを受け止めることはできなかった。
一瞬にしてキャパオーバーになった口の中、喉の奥までごぼ、と押し出される精液。一部受け止めきれなかった粘っこい精液が鼻の方に流れ、思わず黒羽のものから口を離した俺はそのまま「げほ!」と咽返る。飲み込もうとしても量が多すぎて一息で飲み込めない。おまけに、どろりと絡みつくように濃く、煮えたぎるほど熱い精液が唇の端から溢れ、そのまま俺の体を汚すのだ。
伸びてきた黒羽の手に、顎先からどろりと垂れる精液を拭われたと思った矢先だった。そのまま小さく顎を持ち上げられ、精液を口から垂らす俺の頬を舐めるのだ。
「は、ぁ……っ、んむ……っ」
黒羽の肉厚な舌は頬、顎、そして唇へと汚れた精液を拭うように舐めとっていく。
もっと、とねだるように口を開き、黒羽の舌を招き入れようとその胸にしがみつけば、僅かに眉根を寄せた黒羽はそのまま堪えるように舌を俺の咥内へと侵入させた。
「っん、ん……っ、ぅ……っ」
好き、黒羽さん、大好き。好きだ、好きです。
思考はそんな甘い思考で塗り潰されていき、黒羽のことでいっぱいになってしまう。
こちらから黒羽の舌に絡めれば、黒羽は小さく呼吸を乱した。そして、俺をビリヤード台の上へと押し倒すのだ。
「っ、伊波様……」
股の間、お腹の上に当たる重量あるその感触に、下腹部が甘く疼き出す。
出したばかりだというのに既に勃起してる黒羽の性器が自分の腹の上に乗ってるのを見て、無意識の内に俺は固唾を飲んでいた。
早く、奥までぐちゃぐちゃにしてほしい。黒羽さんので、力づくでもいいからねじ伏せられて犯されたい。
黒羽の性器を前に、淫らな被虐的思考が沸々と浮かんでは消えていく。想像しただけでキュンキュンと下半身に力が入り、犬のように呼吸が浅くなった。
俺はそのままそっと足を開き、黒羽の性器を掴んで自分の下半身へと持っていく。
「っ、待て、なにを……」
「挿れてください、……黒羽さん」
「……っ、……」
「黒羽さんのおちんちんで、俺、また気持ちよくなりたい……っ」
持ち上げた腰の間、這わせていた黒羽のものがびくんと反応し、俺の股の間でさらに大きくなるのがわかって胸が熱くなった。
ここまで来て今更後に引けないと黒羽だってわかってるはずだ。だから、俺は黒羽がこれ以上気遣わなくて済むように言葉を吐いた。
「……っ、俺のこと、このまま犯してください」
これは命令です、とそのまま黒羽の背中に手を回し、顔を寄せる。腕の中、黒羽の体が緊張するのが伝わった。
けれど、それも一瞬。黒羽が息を吐いた次の瞬間、柔らかく濡れそぼった肛門へと黒羽のものが突き立てられたのだ。
「――ッ、ぎ、ひ……ッ!」
内臓ごと押し上げられるような圧迫感に、全身の筋肉が引き攣る。それも一瞬、みちみちと内側から器官を押し広げられるその圧迫感も苦痛も全て快感に変換されるのだ。
自分の体ではないみたいだ、粘膜から伝わってくる鼓動、熱だけが現実みたいに生々しく、そのままゆっくりと入ってくるそれに「ぁ、あ」と声が漏れる。
「っ、伊波様……ッ」
「く、ろはさ……ッ! う、ひ……ッ!」
「苦しくはありませんか」と、自分の方が苦しそうな顔をして聞いてくる黒羽に俺は何度も頷き返す。
嘘ではない。黒羽は息を吐き、そしてそのまま俺の腰を掴むのだ。再び深く中を押し上げるように挿入される性器に「ぉっ」と声が漏れる。
「ぁ、あ゛……ッ」
「っ、……伊波様、力を抜け」
「あ、わかんな……っ、ち、からっ、わか、んな……っ、ぃ゛……ッ! ひ、ぐ……ッ!」
ず、と腰が埋まる度に股関節が軋む。足の閉じ方も分からなくなるみたいに黒羽の腰に足を伸ばす。それでも、確実に腹の中を満たしていく黒羽のものの熱を生で感じることができて言い表しようのない多福感に包み込まれるのだ。
半分すらも入っていない、自分の股に突き刺さったその赤黒い性器がドクドクと脈打つのを凝視したまま俺は黒羽の腕にしがみついた。
「っ、く、ろはさ……っんん……っ!」
見過ぎだ、と言わんばかりに顎を掴まれ、そのまま唇を重ねられる。唇がむに、と重なるだけで、性器に押し上げられてぽっこりと膨らんだ腹の中、黒羽のものが更に大きくなるのが分かって心臓がきゅっと締まるようだった。
「っ、ん、う……っ、ふ……ぅ゛……ッ」
呼吸をしろと言わんばかりに絡められ、喉を開かれる。上も下も黒羽に犯され、なにも考えられなかった。舌を絡み取られ、黒羽の咥内まで引きずり出される。そのまま深く舌を絡め取られたまま、再開される抽挿に脳の奥がどろりと熱くなった。
「く、ろはひゃ……っ、ん、う゛……ッ! あ゛、ひ、……ッ! う゛、ぐ」
滲む先走りを塗り込むように、うねる内壁をカリの部分でこじ開かれていく。以前のときのような乱暴な抽挿ではない、気遣ってくれているのがわかったが、だからこそ余計黒羽のものを意識してしまい、触れられた箇所が甘く疼く。
「っふ―……ッ、ぅ、は……っ、くろはしゃ……っ、ぁ゛……っんん……っ!」
「……っ、苦しくないか?」
「っ、ぃ、き、もちい……っ、です、お腹、ゴリゴリして……っ、ぁっ、ん、暖かくて……っ!」
黒羽にしがみついたまま、震える声帯から声を絞り出せば、黒羽は「そうか」と小さく息を吐くように呟いた。重ねられた掌が熱い。
そして、更に腰を進めてくる黒羽に俺は思わず仰け反った。
「っは、……ぁ゛……っ、ん、熱……っ、あ゛……っ! くろはさ、……っ、くろは……ッ、ん、ぅ……っ!」
逃げそうになる体を強くその腕に抱き締められたまま、深く腰を打ち付ける黒羽に全身がびくんと跳ね上がる。震える体を押し倒されたまま、まだ奥まで押し入ってくる黒羽の性器に息を飲んだ。どこまで入ってくるのか、前回はそれどころではなくて受け入れるのでいっぱいいっぱいだったため気にしていなかったが、今は余計黒羽の性器の存在が大きく、それ以外なにも考えられなかった。
瞬間、突き当りの壁に亀頭がぶつかった瞬間。「う゛ひッ」と喉から声が漏れる。
「ぁ゛ッ、そ、そこ、ぉ゛……っ!」
「……っ、相変わらず、浅いな……っ」
「っは、まっ、ぅ゛……っ!」
ずちゅ、と音を立て、再び亀頭で突き当りの部分を押し上げられる。それだけで脳の奥まで貫かれたような衝撃が走り、ぴんと全身が緊張した。
「っ、あ゛……ッ、ぁ、……ッ」
「……っ、伊波様」
「あ゛、ひ……ッ!」
一息吐き、そのままゆっくりと引き抜かれそうになった瞬間、ずる、と肉襞ごと引っ張られ堪らず声が溢れた。あまりの刺激に耐えきれず、抜かないで、と黒羽の腕にしがみつけば、俺を見下ろしたまま黒羽は戸惑ったような顔をする。
「ぅ、うご、かないで、くろはさ……っ」
「っ、は、……貴方はまた、酷いことを仰る……っ」
「ご、めんなしゃ……っ、ぁ゛……っ、う゛、ひ……っ!」
中途半端な状態で止められるのがどれほど苦しいか分かっていた。だから「お、俺が、動く」と必死に声を出せば、黒羽はこちらを片目で見た。
「できるのか?」と尋ねるような視線が熱い。こうしてる間にでも刺さった黒羽の性器は熱くて、こくこくと数回頷き返せば、黒羽は肺に溜まった息を吐いた。
そして、そのまま脇の下に伸ばされた手に体を抱き抱えられる。浮遊感に驚いたのも一瞬、そのまま黒羽の腕に抱き抱えられた瞬間、股の下に刺さった性器が自重で沈んでいく。
「ひ……っ、ぅ、あ……っ!」
「……っ、ゆっくりでいい、無理は、するな」
「ぁ、く、くろはさ……っ、ん、う……っ!」
さっきよりもより密着した体。この体勢はまずい、と俺でも分かる。黒羽の胸にしがみついたまま、俺は腰に意識を向ける。
少しでも力を抜けば、脱力した下半身はそのまま亀頭を奥まで飲み込んでいくのだ。
「はー……っ、ぁ、……っ、あ、ぁ、く、黒羽さ……ッ! は、入って……っ!」
「っ、伊波様……っ」
「ぃ……っ、ひ、ッ、ぐ……ッ!」
亀頭で中を引っ掻かれる度に余計力が抜け、そのままずるずると引きずるように落ちていく体を黒羽に抱き抱えられる。その拍子にみっちりと詰まった性器に内壁にえぐられ、抜け出せない悪循環に陥る。
「っ、ぁ、熱……っ、ん、う……っ」
「……っ、伊波様、動いて大丈夫そうか」
耳元で囁かれ、一瞬頭が真っ白になる。
そうだ、このままでは黒羽が気持ちよくなれない。俺ばっか気持ちよくなって。
そう思うのに、このまま黒羽に動かれたらと想像しただけでじんわりと下半身が熱くなった。恐怖と興奮が入り混じる。
これ以上気持ちよくなったら本当に戻れなくなるのではないかという恐怖が過る。
そして、それ以上の――。
「は、い……っ」
咥内、粘膜から滲む唾液を飲み込んだ。
俺は今自分がどんなどんな顔をしてるのか分からなかったが、黒羽の隻眼に反射した俺は確かに笑っていた。
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