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「なんだ、さっきまでの威勢はどうした?」  どうやら抵抗をやめた俺を不思議に思ったようだ。  本当は殴りたくて殴りたくて仕方がないのだが、その結果政岡を喜ばせることになるならしたくない。どうにかして制服を奪い返したいところだが、この体制じゃままならないし奪い返したところで逃げられるかわからない。  寧ろ積極的になり政岡が萎えるような真似をするという手もあるが、最悪成り行きでアナル貫通になりかねないような大博打に出る勇気は持ち合わせていない。  助けを待つというのもあるが、岩片含め第三者がこの場を通り掛かったときのことを考えれば胃がキリキリと痛んだ。  やはり、一番いいのは誰にも見られずアナル処女も守りこの政岡から制服を取り返してそのまま逃走することだろう。  だが、そのためにはまず上に乗るこいつをどうにかするしかない。 「さっきまで強がってたくせにこれか? 根性ねえやつだな」  小バカにするように笑う政岡は俺の胸板を押さえ、上半身を床に押し付けたまま腰を浮かせる。丁度仰向けになった俺の上から政岡が覆い被さるような形になり明るかった視界は政岡の影で遮られた。  全裸になって考えもなしにただがむしゃらに抵抗すれば根性あるということか。生憎そこまで熱くなるような性格はしていない。  馬鹿にされているようで……いや実際されてるので非常に面白くないが、敢えて俺は頑なに口を閉じた。 「おい、無視すんなよ」 「…………」 「シカトかよ。……まあ、いいだろう。好きなだけ黙ればいい。その態度がいつまで保てるか見物だな」  そうにやにやと笑う政岡の顔面に頭突き喰らわせたくて仕方がないが、抵抗のタイミングは大切だ。ヤル気満々の相手を攻撃したところで相手に反撃を食らって終わりなんて有り得る。  せめて、政岡に隙が出来れば。もう一回金玉蹴り上げようかと企んだとき、政岡に太股を掴まれる。 「っ、あ……?」  思わず、口から間抜けな声が漏れた。  M字を作るように膝を折られ、そのまま腹部に膝がつくくらいの強い力で開脚させられる。自分のさせられてる格好に気付けば、自然と背中に冷や汗が滲んだ。 「へぇ、結構綺麗にしてあんじゃねーか」  開脚した人の下腹部を見下ろす政岡は胸元に置いていた手を離し、そのまま股間に手を伸ばす。なんかもう嫌悪感やら怒りやら焦燥感やらで頭の中がぐっちゃぐっちゃになり、結果、思考が停止した。がそれも束の間。性器を無視して肛門に触れてくる政岡に思いっきり指を突っ込まれ、激痛とともに俺の意識は引き返される。 「は……ぁ、……ッ!」  乾いた内壁を引っ張るように進入してくる異物感に眉を潜める。全身が粟立ち、体内に入り込んできた政岡の指を出そうと全身に力が込もる。お陰で舌を噛みそうになった。 「流石にきっついな。俺の入れたらちぎれんじゃねえの」  笑いながらも問答無用に二本目を僅かな隙間に捩じ込んでくる政岡に俺は顔をしかめる。  第一関節、第二関節とみちみち体内を裂くように進む政岡の指に最早声も出ない。歯を食いしばり痛みを堪えるが、本格的にここで犯す気満々の政岡の言葉を聞き、気が変わった。指でさえあれなのに性器まで突っ込まれてみろ。ケツの穴死ぬ。それだけはなんとしても避けたい俺は、政岡を見上げる。  こいつの隙がないか待っていたが、もう無理だ。我慢できない。これ以上ケツ弄られたらメンタル面に支障がでる。  ――ない隙なら作ればいい。  政岡と初めて出会ったときのことを思い出す俺は、政岡の胸ぐらに手を伸ばした。瞬間、内壁を押し広くように指を拡げられ、一瞬体が硬直する。が、それを堪え、俺は強く政岡の胸ぐらを掴んだ。  そのまま自分に寄せるように政岡を引っ張れば、政岡は口許を緩ませる。 「どうした? しがみついて。そんなに痛か……」  そう政岡が言い終わる前に、問答無用で政岡の唇を塞いだ。  ああ、なにが悲しくて男なんかにキスしなくてはならないのだろうか。しかも俺から。  政岡の後頭部に手を回し、そのまま押さえ付けるように唇を貪れば政岡の全身が緊張する。  政岡と初めて会ったあの日、確か岩片にキスされただとかなんとかで政岡は異常な拒否反応を出していたはずだ。  ただ単に岩片が気持ち悪いだけだという理由なのかもしれないが、今の俺には政岡を黙らせるにはこれしか思い浮かばない。が、どうやら俺の判断は正しかったようだ。目を見開く政岡の手は止まり、確かにそこに大きな隙が出来る。  相手の頭から手を離した俺は、政岡の上半身に思いっきり蹴りを入れた。  折られた足がバネになったようだ。足の裏にはしっかりとした手応えがあり、そのまま政岡は背後に尻餅をつく。  指が抜かれ、落ちていた咄嗟に傍に落ちていた制服だけを拾い上げた俺はそのまま立ち上がる。  呆然とこちらを見上げる政岡はまだなにが起こったか理解していないようだ。政岡の顔はじわじわ赤くなり、例の拒否反応が現れる。  もう少しトドメを刺しておきたかったが、そんなことしてまた返り討ちを食らっては堪ったもんじゃない。逃げるが勝ち。そんな言葉が頭を過る、政岡が立ち上がる前に背を向けた俺はとにかくこの場から全力で離れることにした。

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