「おい、カケル！どこへ行くんだ。まだ話は終わってない。」 「煩い。俺に関わるな。」 同い年で腹違いの兄、翔はこの全寮制高校に入学してから変わった。 髪を赤く染めて、耳に穴を開けてピアスをつけるようになった。 それぐらいなら司もうるさく言うことはない。正直、不良っぽい見た目は好かないが、この学校のかなり緩い校則には違反するわけではない。翔がその見た目を気にいっているのなら仕方がないと思っていた。 しかし、最近の翔はおかしい。授業に出席する事が減り、寮が同室の安西によると寮の部屋に帰って来ない日も多いらしい。 そして、何よりも司が心配しているのは二年の室井 清雅と行動を共にしているらしいというところだ。 室井の家はこの全寮制高校に多額の寄付をしているらしく、多くの問題を起こしているのに退学になる事はなく、起こった問題は全て揉み消されている。 司が入学してまだ三ヶ月だが、その間にも室井とその仲間が気に食わない生徒を暴行している現場を三件も目撃している。 そして、三件とも司は止めに入っていた。 風紀委員もやって来て、室井の仲間たちと揉めることになるのだが、室井はその様子をただ笑って見ているだけで、仲間に加勢する事もない。 また、室井は自分に取り入ろうとする人間を利用して気に入らない者を強姦することもあった。その時、室井はその場にいることもないのだが、あれは室井がやらせたのだと囁かれる。 司は噂などあまり信じない方だが、室井の噂は真実が多いのではないかと思っていた。