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山科による翔の話

翔に逃げられ、一人で学校と寮を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、背中にドンと衝撃が走る。 驚いて振り返ると、ニヤニヤと笑う噂好きの同級生、山科が司を見上げていた。 「工藤、またお兄ちゃんに逃げられたんだって?」 「お前は噂が好きだな。」 「俺だったらもう関わるなと言われているのだから兄弟でも関わらないね。室井がかなりヤバイ奴だって知ってるだろ?」 山科が馴れ馴れしく肩に腕を回してくるのを振り落とし、司は眉間に皺を寄せ話す。 「知っているからこそ、翔と室井を引き離さないと。悪いことに巻き込まれる前に。」 そう言う司に、山科はわざとらしく溜息を吐いて司の耳元に口を寄せ、嫌な話を告げる。 「正義感、強いのは工藤の良いところだけどさ、お前のお兄ちゃん市村 翔は室井 清雅と付き合っているって噂だぜ。」 司の眉間の皺はさらに深くなる。 「怒るなよ。噂と言っても、ほぼ真実だし。 一年の中でも室井に気に入られようと、室井に近づいた奴はいっぱいいるけどさ、そいつらはパシリにされたり、室井が気に入らない奴を暴行したり、強姦したりする時の手駒になるだけだけどさ、市村は違うだろ?パシリにはなってないし、暴行や強姦に関わっていると言う話も聞かない。」 「それは、翔がそういう汚いことには関わらないようにしているから……」 司の話を途中で遮り、山科が再び話し出す。その顔には、いつものヘラヘラした表情はなかった。 「違う。本当は工藤もわかっているんだろ?市村がそういう事に関わりたくないならそもそも室井に近づかないはずだ。でも、近くにいてそういう事に関わらない事を許されているのは、工藤が特別だからだよ。」

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