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Prologue
【注意】暴力、監禁、小スカなどの描写があります。苦手なかたは読まないでください。
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土曜の夜、男を拾った。
その男は自宅マンションのゴミ集積場にいた。
居た、というより捨てられていたといった方が、しっくりとくる状況だったがこの際それは関係ない。
まず、男は服を着ていなかった。
眠っているのか気絶しているか判別は困難だったが、ゴミ袋を押し潰すように仰向けに横たわっている。
あり得ないような状況に、酒が見せた幻覚なのかと自分の正気を疑ったが、触れれば確かな感触があり、脈も正常に動いていた。元々、正体を無くすまで飲むような真似は絶対しない。
彼の股間には、申し訳程度にハンカチ大の布が掛けられてはいたけれど、人に見つかれば警察を呼ばれるレベルの格好だ。更に、街灯の薄明かりに晒された肌は青白く、その身体のあちらこちらに、暴力を受けたであろう鬱血痕が残されていた。
近づいて顔を覗き込めば、派手ではないが整っている中性的な面持ちがある。そっと布を取り払うと、色素の薄い萎えたペニスを覆う下生えも非常に薄く、おまけに尿道口からは、小さな花が生えていた。
連れ帰ろうと思ったのは、この十二月の寒空の下、裸で放置され続けては、命に関わるといったような親切心からではない。
その男が、自身の記憶に深く刻まれていたからだ。
痛々しい姿を目にして、久々に……ある種の高揚感に包まれた市川恭(きょう)は、着ていた厚手のコートを脱いで、男の身体を包み込むと、軽く肩に担ぎ上げ、マンションの入り口へと消えた。
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