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 向かいのソファーに腰を下ろせば、心得たように舎弟がビールを持ってくる。それを受け取り、外で待つように指示を出してから一口煽ると、先に飲んでいた周防がグラスをこちらに掲げ、「誕生日おめでとう」と、一気に中身を飲み干した。 「まだ先だ」 「まあまあ、細かい事は気にしない。で、俺からの誕生日プレゼントは気に入った?」 「……やっぱりお前か」  ため息混じりに返事をすると、喉を鳴らして周防は笑う。 「一番欲しい物をプレゼントするって言ったろ」 「確かに言ったな」 「で、花まで添えて置いたんだけど……合ってた?」 「分かってるだろ。俺が拾った時点でお前の勝ちだ」  自信を含ませ尋ねる周防に、恭はアッサリと負けを認めた。 「なら良かった。踏み出せなかった市川の為に、俺もかなり手を尽くした。だから……分かってるよな」  急に声のトーンが下がる。言いたいことは分かっているから恭は黙って頷いた。 「俺が勝ったんだから、約束守れよ。あの物件からは手を引け」 「分かってる。大体、普通にお前が金を積めば、俺だって手を引いたのに、何でゲームなんか……」 「俺なりの友情……かな。咲夜の会社の社長がうちのSMクラブの方の会員でさ、ちょっとお願いした」  周防は、学生時代起業して、今となっては東京を始め、地方都市にも店を構える会員制高級クラブの経営者だ。

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