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体育祭1

りんりんとなる目覚ましで飛び起きて急いで制服に着替える。俺はとんでもないことを忘れている気がするが、遅刻ギリギリの時間でそんなこと構ってられない。 適当に食パンを突っ込んで、玄関に向かう。 「行ってきまーす!!」 「充希、おはよう」 ドアを開けたら真悠がなぜかそこにいた。 「え、あ、あれ、おはよ…」 「……充希、朝迎えに行くって言ってたの覚えてる?」 「あ…ああー!そうだったかも!」 俺は思わず落とした学校指定のバッグを拾い上げて玄関のドアを閉める。 内心充希は記憶がおぼろげでそんな約束したか覚えていないが、真悠が不機嫌そうな顔をしたため覚えていると嘘をついた。曖昧に履いてた靴にしっかりかかとを入れる。 きちんと履き直して顔を上げた充希はまた顔をギョッとさせた。真悠が手を差し出している。 「充希、付き合って初めての登校デートだね」 にこりとした真悠の笑顔に爽やかな香りを充希は感じとる余裕はなかった。 充希は必死にあの時の記憶を遡ろうとするが、真悠と繋いだ手の握力がすごくて断片的にしか思い出せない。 たしか、告白のようなものをされた記憶がある。しかし、あの後俺はお断りの言葉を出す前に真悠に押し切られていた。 「男同士がダメとか古臭いこと言わないよね?それとも充希は俺のこと大っ嫌いなの??」 嫌いではないけど……。 そう言葉を濁したらいつの間にか付き合う方向へ話が進んでいた。 しかも男も女も含めて恋愛経験のない俺は付き合う以前に告白されたのも初めてだ。真悠みたいな完璧なイケメンを振るには経験値が足りていなかった。 さすがに学校へ近づいてきて、充希は手を繋いで行くのはやめようと真悠へ抗議した。 真悠はなぜ?という顔をしたが、よく恋愛関係のことを知り合いにバレると面倒くさいことになるらしいという話をすると、まあいっかと手を離してくれた。しかし、真悠はそこで立ち止まってしまった。 「あ、じゃあそのかわり」 真悠は自身の鞄の中身を漁る。鞄からは小さい袋を取り出した。カサカサと小さく音を立てて袋から中身を取り出す。 「充希は俺のものだからこれ付けててね」 そう言って真悠はネックレスを充希の首元へつけた。鮮やかな手付きに充希は何が起こったのかわからなかった。一瞬で取り付けられたネックレスはシャツの中に真悠の手でしまい込まれた。 「俺とお揃いね」 キラキラと笑う真悠はいつもより2割増ぐらいイケメンに見える。一連の動作をスマートに終えた真悠は満足して歩き出してしまった。 充希は自分に起きたことを理解するのに結構な時間を要した。 やんわりと服の上からネックレスに触れる。少しコツコツとした石の感触が慣れなかった。

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