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願い事3
真悠とあれからさまざまな魚たちやイルカのショーを見た。途中からは真悠よりも俺の方がハマっていて、イルカのタッチまでさせてもらってしまった。
「真悠、イルカ、イルカ…」
「なんでそんなに充希が震えてるの」
「挨拶とかタッチしてくれた…」
充希って動物でそんなに感動するの?と不思議そうに真悠はこちらを見つめる。
動物は触れただけで違う生き物と実感する。その生き物たちと意思疎通ができるのがすごい…外人に自分のめちゃくちゃな英語でも話が通じた時と同じ気持ちだ。
充希ってたまに変なんだからと頭をポンポン撫でられた。
その言葉にムッとして、真悠を上目遣いで見る。
「真悠もおかしいところたくさんあるよ」
「そう?」
真悠はそう言いながら、お土産ショップの人形を手に取ってはさまざまな角度で見ている。しかし何か納得しなかったのか、棚に戻した。
さっきから、ラッコやサメの人形などは目もくれず、お魚のキーホルダーや人形ばかり手に取っている。
「お魚そんなに気に入ったの?」
「うーん、別に」
「あっ!そういうとこ、変なところ!」
真悠は青魚がパタパタと尾ひれを立てるおもちゃのボタンを押しながらこっち見た。
「俺、ネオンテトラが欲しいだけだよ」
「ネオンテトラ?」
さっきのキラキラしてる魚のことか。確かに真悠が真っ先に興味を持ったのはあの魚かもしれない。
「なるほどね、でもネオンテトラのぬいぐるみとかキーホルダーってあんまり聞いたことないなぁ…」
あれは?と釣り用の小魚を真似たおもちゃを充希は指した。キラキラ光ってるし似てるよ、と言ったら真悠は充希に悲壮感の漂う顔で見てきた。
「ご、ごめんって!でもネオンテトラじゃないとダメ?」
真悠は充希をじっと見つめる。
「充希みたいだから」
充希みたいだから、ネオンテトラが欲しい。
ぽかんと充希は目を開いた。
「本物ならここにいるじゃん」
「……欲しいっていったら充希は手に入る?」
真悠はじっと充希を見つめる。
真悠はよくわからない。こういう時に限って真剣な目をする。
「それってどういう…」
真悠はそっと充希の手を包み込み、真悠自身の頬にあてる。閉じたまつ毛はとても長い。
「充希を俺のものにしたい」
それはつまり…?
真悠はゆっくりとまぶたを開き、透き通った茶の瞳を反射させた。
「充希のことが好きだよ」
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