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体育祭3
昼はもちろん有無を言わさず真悠と一緒だった。しばらくの間避けていた真悠との昼は久しぶりで変な緊張感があった。
「体育祭何出るか決めた?」
真悠はサンドイッチを頬張りながら、充希へ問うた。
「あ、俺は団体競技と借り物競走にでるよ。真悠は?」
「俺は団体競技のやつと、クラスリレー」
「リレー…」
(いいな…やっぱり俺の欲しいものを手に入れられるんだな、真悠は)
ぼんやりとそんなことを思ってしまって充希は急いで頭を振った。
真悠は驚いて、充希大丈夫?と後頭部を優しく撫でてくる。大丈夫、変なこと思い出しただけと充希は笑ってごまかした。
「そういえば、昼メッセージが届いたんだけど、どうやって送ったの?」
「あ、届いてた?よかったー。返事が来ないから他の人に送っちゃったかと思った」
「あ、ごめん、びっくりして送りそびれた」
真悠に謝ると「いいよ、俺も急に送っちゃったから」と笑って返してくれた。
「電話番号登録とか友達リストで見つけれるんだよ。誰か友達登録してたらその友達の友達でフレンド登録できるようになってるんだ」
そうなんだ…。遼か中学の陸上部メンバーしか充希はそのアプリには友達登録していなかったが、真悠は現陸上部だからそこから充希をみつけたんだろう。充希はSNSに疎かったからどうやるかは詳しくはわからなかったが、そういうこともできるんだなと思った。
「そうそう。せっかく土日休みだから家来る?」
「えっ、お泊まりなんてそんな…。ご家族とか迷惑かけちゃうかもしれないし」
「そこは大丈夫。俺一人暮らしだからそんなの気にしなくていいよ」
「一人暮らしなの?」
うんと真悠は頷く。元々は親と暮らしていたそうだが、真悠の父は有名な弁護士らしくて最近は仕事に追われほぼ家に帰ってこないらしい。真悠の母も海外の方に今はいて、こちらにはあまり帰ってこないという。
「一軒家だけど一人で住んでるから寂しくてさ。充希、よかったら家きてよ」
「あ、うん…ちょっと母さんとかに聞いてみる…」
うちの家も基本的に母は家を空けているが、夜勤や仕事終わりは必ず帰宅し弁当やご飯を作ってくれる。真悠がいつも購買で買ったパンや弁当なのは、作ってくれる人がいないからだろう。しかし真悠は羨ましがることも悲観することもせず、何ともなく過ごしている。それが彼をまた特筆な人間だと感じさせた。
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